『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着』アーティゾン美術館──沖縄と東北、二つの場所の記憶を紡ぐ
青野尚子のアート散歩。今回は、近代絵画を中心に質の高いコレクションを誇るアーティゾン美術館の『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着』。展覧会タイトルの「漂着」は偶然と必然、またよそからやってきた人や物への応答という意味の語だ。
文・青野尚子
近代絵画を中心に質の高いコレクションを誇るアーティゾン美術館。「ジャム・セッション」は現代アーティストがコレクションから作品をピックアップ、自作とあわせてインスタレーションするという試みだ。6回目となる今回は山城知佳子、志賀理江子の二人の作家が登場する。
山城は1976年、沖縄生まれ。写真やビデオ、インスタレーションによって沖縄の歴史や政治、文化を探求する。近年は沖縄の問題にとどまらず、アイデンティティや生と死の境界、記憶の継承といったより普遍的なことがらについて触れるような作品を作っている。「ジャム・セッション」で発表する新作は沖縄・パラオ・東京大空襲の記憶を映像や語り、歌、祈りによって編みあげたもの。人々が集い、さまざまなことを共有するバラックを舞台に展開される。
1980年、愛知県出身の志賀は2008年に宮城県に移住、人と自然との関わりや代々続く記憶といったモチーフをもとに制作を続けてきた。2011年の東日本大震災では高度経済成長期を思わせる「復興」に圧倒されたという。今回の展覧会では東北、三陸における海から陸への物流の変化に関する、高さ4メートルもの写真絵巻を空間全体に展示する。
展覧会タイトルの「漂着」は偶然と必然、またよそからやってきた人や物への応答という意味の語だ。沖縄と東北、二つの場所で制作を続けるアーティストが見るものの感覚と記憶にも波紋を広げる。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着』
開催中~2026年1月12日(月・祝) アーティゾン美術館
コレクションからはジャコメッティなど、山城さんと志賀さんが選んだ4点が展示される。
アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時~18時(金曜は〜20時) 月曜(10月13日、11月3日、11月24日、2026年1月12日は開館)、10月14日、11月4日、11月25日、12月28日~2026年1月3日休 入館料一般1,500円ほか
『クロワッサン』1151号より
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