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映画『女性の休日』──50年前、休むことで世界を変えた女たち

アイスランド全女性の90%が仕事や家事を一斉に休んだ日をめぐるドキュメンタリー。監督:パメラ・ホーガン エンドクレジットソング:ビョーク 出演:ヴィグディス・フィンボガドッティル、グズルン・エルレンズドッティル 10月25日(土)より、東京・シアター・イメージフォーラムほか全国公開。

文・兵藤育子

『女性の休日』

映画『女性の休日』──50年前、休むことで世界を変えた女たち

北欧の小さな島国アイスランドは、16年連続でジェンダーギャップ指数1位(世界経済フォーラム発表)を維持している。2025年の同ランキングで118位の国、日本に暮らす女性としてふと思う。なぜそんなことが可能なのか? 本作は今から50年前、“ジェンダー平等先進国”になる種がまかれた、歴史的な一日を振り返るドキュメンタリーだ。

その一日とは1975年10月24日、アイスランド全女性の90%が仕事や家事を一斉に休み、女性がいないと社会が回らないことを証明した「女性の休日」のこと。前代未聞のムーブメントの火付け役となるのが、「レッドストッキング」というフェミニズム運動だ。たとえば、男性目線の美人コンテストの会場に白い雌牛を連れて行ったり、ラジオ番組で生理や性生活などの赤裸々トークをしたり。その行動は一見過激だが、常にユーモアがあり、男性を敵対視しているわけではないことが伝わってくる。彼女たちは言う、「ほんの少し変わってほしかっただけ」と。

当事者たちの語りを再現したアニメーションが随所に差し込まれ、ポップかつエモーショナルに演出
当事者たちの語りを再現したアニメーションが随所に差し込まれ、ポップかつエモーショナルに演出

気になるのは、90%もの女性をいかに共感させ、立ち上がらせたのかという点。そこには北海道よりやや大きい程度の国土に暮らす人たちの、コミュニケーションの緊密さがうかがえる。そして首都レイキャビクのオフィスで働く女性も、地方で農業に従事する女性も、あるいは船の上で男性に交じって働く女性も、しなやかに連帯していく様が美しい。

監督を務めたのは、アイスランド旅行中にこの歴史を偶然知ることになった、アメリカ人のパメラ・ホーガン。私たちと同様、外国人の視点で、なぜこんな偉業を成し得たのか、当事者たちのコメントや、貴重なアーカイブ映像で解き明かしていく。印象的なのは「歴史的瞬間は、あとになってからじゃないとわからない」という言葉。彼女たちの勇気ある行動を、異なる時代、異なる国で起こった奇跡にしてはいけない。“種まき”は今からでも遅くないのだ。

ココが見どころ!

(c)2024 Other Noises and Krumma Films.
(c)2024 Other Noises and Krumma Films.

作品的にも最も盛り上がるのは、やはり1975年10月24日に実施された集会のアーカイブ映像。レイキャビクの広場に、当時の人口21万人の10%以上となる2万5000人が結集。映し出される群衆がほぼ女性というのは、ほかに類のない圧巻の光景だ。この集会には、のちに国を動かす女性たちも参加。「女性の休日」から5年後の1980年、世界初の女性大統領となったヴィグディス・フィンボガドッティルも、当時を回想している(左写真)。

『クロワッサン』1151号より

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