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福光屋──革新が伝統につながる、400年の伝統を支える家訓

今の時代に長く受け継いできた伝統の技術をいっそう磨き、そこからまた新たな商品を生み出し続ける老舗。今回は、創業400年の酒造であり、コスメに調味料、エナジー飲料にスイーツなど、さまざまな商品を手がける「福光屋」の飛躍の内側を探った。

撮影・黒川ひろみ 構成&文・中條裕子

福光屋(ふくみつや)

福光屋──革新が伝統につながる、400年の伝統を支える家訓

1 三年熟成の福みりんを加えて炊いた餡に無花果や胡桃を詰め込んだ羊羹。2 アミノ酸、クエン酸含有のエナジードリンク。3 米を植物性乳酸菌と麹で発酵させた飲料。4 やさしい甘さとさらりとした後味が特長のノンアルコール糀甘酒。5 福光屋の米焼酎を使用し熟成させた本みりん

1. 三年熟成 純米本味醂使用 果実の味醂羹 ミニサイズ5個 箱入 2,160円、2. VATEN R バテン アール 100mL 756円、3. お米の醗酵飲料 ANP71 150g 324円、4. 酒蔵仕込み 純米 糀甘酒 150g 248円、5. 純米本味醂 福みりん 三年熟成 720mL 2,200円


コスメに調味料、エナジー飲料にスイーツ。ジャンルが全く異なる商品に見えながら、これらはすべて今年創業400年を迎えた酒蔵から生まれたもの。そこには日本酒造りで培ってきた技術が用いられており、品質に絶対の信頼があるのが福光屋ならでは。

「ずっと金沢の石引という地域から福光屋は離れたことがないんです。というのも、白山を源流とする雨雪が貝殻層を通り抜ける間にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれて、発酵に最適な水となり福光屋の地下に辿りつく。弊社が使っている水はこの土地ならではのもの。おかげで400年間酒造りを続けてこられました」

そう教えてくれたのは、広報を担当する岡本亜矢乃さん。長い歴史の中で日本酒の副産物を使った焼酎なども手掛けてきたが、どれもアルコール発酵が基礎となっていた。が、近年は時代の変化に対応するため、ノンアルコールの商品開発も手掛けることに。

「きっかけは道路交通法の厳格化です。2002年に飲酒運転の取り締まりが厳しくなり、ノンアルコールの日本酒風味飲料を開発することに。そうした技術を使って肌に有益なノンアルコールのコメ発酵液ができ、2003年には本格的に化粧品事業を始動しました。同時に甘酒を発売するなど、酒蔵がノンアルコールの事業を拡大していくこととなり、今に繋がっているんです」

それ以前には、日本酒造りでも時代の大きな変化を経験していた。

右から、瑞秀 中汲み囲い 特別栽培米 契約栽培 山田錦 純米大吟醸 2018酒造年度 720mL 化粧箱入 1万1000円、百々登勢 五年 長期熟成 純米酒 720mL 化粧箱入り 5,500円、加賀鳶 純米大吟醸46 百万石乃白 720mL 化粧箱入 2,200円
右から、瑞秀 中汲み囲い 特別栽培米 契約栽培 山田錦 純米大吟醸 2018酒造年度 720mL 化粧箱入 1万1000円、百々登勢 五年 長期熟成 純米酒 720mL 化粧箱入り 5,500円、加賀鳶 純米大吟醸46 百万石乃白 720mL 化粧箱入 2,200円
仕込み水である〈百年水〉は、白山の麓に降り積もった雨雪が100年の年月をかけて酒蔵の地下に届く
仕込み水である〈百年水〉は、白山の麓に降り積もった雨雪が100年の年月をかけて酒蔵の地下に届く
酒の仕込みは冬場が主。11月から3月までは酒蔵の見学も行われている。<a href="https://fukumitsuya.co.jp" target="_blank">詳しくはHP(https://fukumitsuya.co.jp)にて確認を</a>
酒の仕込みは冬場が主。11月から3月までは酒蔵の見学も行われている。詳しくはHP(https://fukumitsuya.co.jp)にて確認を
直営店は金沢店と「ひがし茶屋街」の店舗のほか、都内にも玉川店、東京ミッドタウン店がある
直営店は金沢店と「ひがし茶屋街」の店舗のほか、都内にも玉川店、東京ミッドタウン店がある
右から、瑞秀 中汲み囲い 特別栽培米 契約栽培 山田錦 純米大吟醸 2018酒造年度 720mL 化粧箱入 1万1000円、百々登勢 五年 長期熟成 純米酒 720mL 化粧箱入り 5,500円、加賀鳶 純米大吟醸46 百万石乃白 720mL 化粧箱入 2,200円
仕込み水である〈百年水〉は、白山の麓に降り積もった雨雪が100年の年月をかけて酒蔵の地下に届く
酒の仕込みは冬場が主。11月から3月までは酒蔵の見学も行われている。<a href="https://fukumitsuya.co.jp" target="_blank">詳しくはHP(https://fukumitsuya.co.jp)にて確認を</a>
直営店は金沢店と「ひがし茶屋街」の店舗のほか、都内にも玉川店、東京ミッドタウン店がある

時代が変わることで広がった、日本酒造りの世界観と味わい

「1980年代後半の女性の社会進出や、1992年の級別制度廃止を見据えて日本酒造りを改革しました。それまでは国税局の審査基準に合わせて活性炭を使用する濾過を多く行った時代がありました。そのうち審査を受けていない多様な日本酒が地方から発売され、市場で支持されるように。二級とされていたお酒のほうが個性があっておいしい、と。制度廃止以降、福光屋では明治時代に誕生したハウスブランド・福正宗に加え、黒帯や加賀鳶(かがとび)、瑞秀(みずほ)、百々登勢(ももとせ)など、さまざまな世界観と味わいをもったお酒が誕生しています」

そうした時代の変化に対応して酒造りの技術が進化し、直営店を構えることで顧客の声から開発された商品も。

「1999年に銀座5丁目に初めて路面店をオープンした際には、酒蔵ならば甘酒も作れるでしょうとお客さまに言われたことがきっかけで、添加物一切不使用の甘酒を開発したり。そのタイミングで日本酒やみりんといった酒蔵ならではの素材を使ったスイーツも販売することとなりました」

そうした、周囲の声を拾ってヒントとしながら商品化する柔軟性は、金沢の地に長く根付きながら培われてきたもののようだ。

「金沢は食文化が豊かで味わいに厳しい方が多いので、指摘や評判などはすぐ社長の耳に入ってくる。芸妓さんがお客さんの残したお酒をお風呂に入れると肌がすごくツルツルになるという話も耳にして。そこから入浴専用の〈すっぴん 酒風呂〉が誕生しました。もともと明治時代から切手やビールを売ったり、直接お客さまとやり取りをすることで、市場の動きを読んで商売をしていたようです。そうした教えは代々受け継がれていて、そこが時代の変化と戦う力になっているのだと思います」

長い歴史の中で、戦争や大火、飢饉、伝染病もあった。時代の変化に沿って経営できるかがのれんを守ることにつながる、チェンジはチャンスと捉えているという福光屋。「伝統は革新の連続なり」という家訓も伝えられ、革新をしてこそ後ろを振り返ったら伝統が続いているのだという考え方のもと、それを具体的な商品としても提案し続けている。ほかにはない強さは、長く伝わる教えにあるのだと大いにうなずかせられる。

福光屋──革新が伝統につながる、400年の伝統を支える家訓

1・2・3・4は有機栽培米を使用した発酵由来のオリジナル原料に、地元で採れる野生クロモジの豊かな香りと成分をプラスしたオーガニックスキンケアシリーズ。5・6 米発酵技術から生まれた美容成分が肌本来の能力を引き出す。7 杜氏と蔵人が丁寧に醸造した入浴専用の日本酒。

1. フレナバ エモリエントクリーム 50g 5,720円、2. フレナバ エモリエントオイル 25mL 6,600円、3. フレナバ クレンジングクリーム 135g 4,180円、4. フレナバ LPSプロテクトバーム 25g 3,740円、5. アミノリセ ナチュラル モイスト ローション 120mL 6,160円、6. アミノリセ ナチュラル モイスト クリーム 30g 8,800円、7. すっぴん 酒風呂 SIO 300mL パック1,320円。

ここから新展開も!

福光屋──革新が伝統につながる、400年の伝統を支える家訓

〈F1625〉 日本酒の新しいあり方を提案しようと14代目が立ち上げたのが、〈F1625〉というブランド。その年最高の味を追求し醸造された限定酒や熟成の可能性を秘めた年度の日本酒など、限られた本数販売のため会員制となっている。会員になると、ブランドの世界観に共感したシェフとのペアリングディナーや、アートギャラリーでの試飲会に参加できる。

『クロワッサン』1150号より

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