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坂東玉三郎さんが語る、シネマ歌舞伎『源氏物語』──「六条御息所の人生は、『源氏物語』のなかでも最も演劇的だと思っています」

昨年、上演されて話題となった玉三郎さんの『源氏物語』が、待望のシネマ歌舞伎に。

撮影・天日恵美子 文・木俣 冬

坂東玉三郎(ばんどう・たまさぶろう)さん 歌舞伎俳優。1957年、初舞台。1964年、五代目坂東玉三郎を襲名。重要無形文化財保持者(人間国宝)、文化功労者。フランス芸術文化勲章コマンドゥール章、紫綬褒章受章。日本芸術院賞・恩賜賞、高松宮殿下記念世界文化賞など数多くの賞を受賞。10月に東京・新橋演舞場で演出を手がけた舞台『星列車で行こう』、11月に静岡・MOA美術館で『熱海座 坂東玉三郎特別舞踊公演2025』が開催
坂東玉三郎(ばんどう・たまさぶろう)さん 歌舞伎俳優。1957年、初舞台。1964年、五代目坂東玉三郎を襲名。重要無形文化財保持者(人間国宝)、文化功労者。フランス芸術文化勲章コマンドゥール章、紫綬褒章受章。日本芸術院賞・恩賜賞、高松宮殿下記念世界文化賞など数多くの賞を受賞。10月に東京・新橋演舞場で演出を手がけた舞台『星列車で行こう』、11月に静岡・MOA美術館で『熱海座 坂東玉三郎特別舞踊公演2025』が開催

歌舞伎界のみならず日本の至宝である坂東玉三郎さん。毎公演、チケットは争奪戦となり、なかなか観る機会が得られない人もいる。貴重な公演を追体験できるのが「シネマ歌舞伎」だ。

「自分の公演を映画に残そうという気持ちはあまりなかったのですが、残すのだったらちゃんと残すということではじまったのがシネマ歌舞伎です。舞台は終わってしまいますが、シネマ歌舞伎として良い作品が残り続けるのはうれしいなと思っています。やっぱり観ていただくのが大事かな、と」

教養高き玉三郎さんは映画にも造詣が深い。映画化の際は制作にも携わる。「シネマ歌舞伎」の玉三郎さんの作品には、本人が徹底的に選び抜いた瞬間が収められている。今回公開になるのは『源氏物語 六条御息所の巻』。光源氏は市川染五郎さん。玉三郎さんが演じる六条御息所は光源氏の心が自分から遠ざかっていくことを思い悩み生霊と化す。実にものの哀れに満ちている。

「『源氏物語』自体はよく書けた物語ですけれど、役者としては演じにくいものなんです。例えば、明石の上や紫の上や空蝉は源氏に愛される存在なだけでドラマはないでしょう。御息所が最も演劇的だと思います。夕顔や御息所のように嫉妬したり呪い殺されたりすることがドラマになるんです」

葛藤のあるドラマティックな御息所と源氏のやりとり。繊細な表情の変化をアップで見ることができるのだ。

シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』が9月26日(金)から公開。玉三郎さんの特別インタビューも併せて上映される。(撮影・岡本隆史)
シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』が9月26日(金)から公開。玉三郎さんの特別インタビューも併せて上映される。(撮影・岡本隆史)
坂東玉三郎さんが語る、シネマ歌舞伎『源氏物語』──「六条御息所の人生は、『源氏物語』のなかでも最も演劇的だと思っています」
シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』が9月26日(金)から公開。玉三郎さんの特別インタビューも併せて上映される。(撮影・岡本隆史)
坂東玉三郎さんが語る、シネマ歌舞伎『源氏物語』──「六条御息所の人生は、『源氏物語』のなかでも最も演劇的だと思っています」

「染五郎くんはしっかりと相手の言葉を受けている。その表情を拾いました。公演当時19歳ながら光源氏という大役を見事に演じていましたね」

御息所の生霊の表現は、公演とは別に撮影したものを合成したそうだ。

「大きなスクリーンでディテールをはっきり見られるのがシネマ歌舞伎のいいところだなと思います」と玉三郎さん。芸術性が高いと定評のある美術や衣裳にはこのような意図があった。

「今回の美術は、あえて几帳のみのシンプルなものにして、光の加減で見せ方を工夫しました。舞台転換で裏側になると全然違う色になっているという仕掛けもあります。衣裳は、御息所の人物像を表すかのような牡丹と朽木の柄です。御息所が気に病む、どこか年を取っているというイメージというのかな、朽ちているものという意味があります」

唯一無二の美の創り手。自身の美を保つルーティンはあるのでしょうか。

「とりたてて美を保つことはしていないんですよね。ただ、体操を欠かさないとか、食事をちゃんとするとか、体重をキープすることだけはやり続けています。でもそれはお客さまに見ていただくためには当然のことですから」

凛として語る玉三郎さん。〈品格〉という言葉が似合う人だ。〈品格〉とは何でしょうか。「とにかく過ぎないことでしょうね。芝居をやり過ぎないというか、役の中に心を込めていくということが大事かな、と思います」

『クロワッサン』1150号より

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