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過労、ストレス、目や胃のトラブル──薬膳の観点から選ぶ、元気を取り戻す食材

疲れて食事がおろそかになる、食が細くなる。その悪循環が疲労を常態化。「薬食同源」を実践する薬膳の知恵を、国際中医師・国際中医薬膳管理師・管理栄養士の植木もも子さんに教えていただきました。

撮影・小川朋央 イラストレーション・くぼあやこ 構成&文・松本あかね

「肉体的な疲れ、精神的な疲れ。中医学(中国の伝統的な医学)の観点からいうと、どちらの場合も『気・血』の不足とめぐり不足が最大の原因です」と国際中医師、国際中医薬膳管理師、管理栄養士の植木もも子さん。

「気」は一種のエネルギーで生命力を表し、「血」は血液とそれが運ぶ栄養素を指す。中医学では「気」「血」に「津」(体液)を加えた3要素が絶えず体をめぐり、心身を維持するとされる。消耗した気・血・津は食べ物によって補われ、疲労の場合は特に気・血を養うものが必要だ。

「薬膳では季節や体調に応じて食材を選びます。生命力のあるものを食べて気を養い、血を作るものを食べてきれいな血液を体じゅうにめぐらせる。そうすれば細胞から活性化し元気が蘇ります」(植木さん)

過労、ストレス、目や胃のトラブル──薬膳の観点から選ぶ、元気を取り戻す食材

「気・血・津」をめぐらせる
薬膳では「気・血・津」の不足を補い、滞りを解消する食材を食べて、「気・血・津」がバランスよく体内をめぐることを目指す。「気」は「血」「津」を運ぶ乗り物に例えられ、めぐりを促す重要な働きを担う。

過労、ストレス、目や胃のトラブル──薬膳の観点から選ぶ、元気を取り戻す食材

「肝・脾・腎」が疲労回復に影響
中医学では臓器の機能を「五臓六腑」に分けて考える。五臓は栄養を蓄えて使い、六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)は消化・排泄を担う。「肝」はストレスに弱く「脾」はストレスで「肝」に抑圧され、「腎」は過労や睡眠不足で消耗。

[ ]内は五臓の働きに関連する臓器や体の部位

過労、ストレス、目や胃のトラブル──薬膳の観点から選ぶ、元気を取り戻す食材

体の疲れ

過労により「気・血」が消耗。めぐりも滞る
肉体疲労は筋肉や腱、関節や骨など体を構成する各所が消耗することから起こる。最も足りていないのは「気」、その次が「血」。気を養う代表的な食材は鶏肉と米。血を補うのは色の濃い野菜や果物、イカ・タコなど。めぐりをよくするには香味野菜や柑橘など香りのよい食材を。

過労、ストレス、目や胃のトラブル──薬膳の観点から選ぶ、元気を取り戻す食材

ストレス疲れ

ストレスが「肝」の気のめぐりを阻害
イライラやドキドキ(不安感)はストレスによって五臓の「肝」の気が滞り、熱を帯びることが原因。熱を冷まし水分を補うには梨やセロリ、緑茶などがよく、気のめぐりを促す野菜や柑橘も積極的に。さつまいもなど甘みを持つ食材は心身の痛みを和らげるとされる。

過労、ストレス、目や胃のトラブル──薬膳の観点から選ぶ、元気を取り戻す食材

目・胃の疲れ

目は「肝」の働きの影響大。過労は胃の機能の低下に
目の充血は「肝」の疲労を表す。胃の疲れはストレスや過労から消化吸収を担う「脾」の働きが抑えられるために起こる。「肝・脾」の機能を助ける帆立をメインにメンテナンスを。クコは目の疲れやかすみによい。山芋は消化酵素や胃の粘膜を保護する成分を含む。

  • 植木もも子

    植木もも子 さん (うえき・ももこ)

    国際中医師、国際中医薬膳管理師、管理栄養士

    薬膳と栄養学の観点から、滋養に富みかつおいしいレシピを雑誌や書籍等で発信。監修本に『増補新版 薬膳・漢方 食材&食べ合わせ手帖』(西東社)。

『クロワッサン』1149号より

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