『HOKUSAI― ぜんぶ、北斎のしわざでした。展』CREATIVE MUSEUM TOKYO──現代的な表現を先取りした葛飾北斎
文・青野尚子
世界でもっとも有名な絵画といわれる『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』。その作者、葛飾北斎は90年という長い生涯で3万点もの作品を残した。その間、引越しは93回、次々と変えた画号は30以上。彼の途方もない画業に圧倒される展覧会が開かれる。
この展覧会では日本でも有数の浮世絵コレクター、浦上満氏が所蔵する珠玉の北斎コレクションが公開される。『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』はもちろん、人体や動物など多彩なモチーフの絵手本『北斎漫画』、曲亭馬琴らと組んだベストセラー『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』、『新編水滸画伝』の挿絵など300点以上の作品が並ぶ。
中でも人体の動きを的確にとらえた北斎の人物画は今にも動き出しそうだ。そこでこの展覧会では日本屈指のアニメーターが『北斎漫画』の「雀踊り」などをアニメーション化したものを映像展示する。
また北斎の絵には現代のアニメやマンガに通じる表現も多い。彼は集中線や効果線を巧みに使って爆発や閃光、波や風など肉眼ではとらえにくいものを勢いまで描き出す。会場ではさまざまな切り口で北斎のユニークな表現を紹介する。
最晩年の北斎は「魔物を蹴散らす」ため、日課として獅子などを描いていた。この『日新除魔図(にっしんじょまず)』はこれまで200図以上が知られているが、新たに発見された16図が浦上コレクションに加わった。今回、初公開されるこれらの肉筆画を含め、生涯、描き続けた北斎の胆力に改めて驚かされる。
『HOKUSAI― ぜんぶ、北斎のしわざでした。展』
CREATIVE MUSEUM TOKYO 9月13日(土)~11月30日(日)
一筆描きでさらさらと描いたものや、マンガのコマ割りのような表現など、北斎のさまざまな実験にも注目したい。会期中、一部展示替えあり。
『クロワッサン』1149号より
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