伝統とアートが出合う街──漫画家・ひうらさとるさんの城崎温泉街の楽しみ方 Vol.1
撮影・上原未嗣 ヘア&メイク・中村みき イラストレーション・ひうらさとる 文・日高むつみ
漫画家
1984年にデビュー。代表作に『ホタルノヒカリ』『西園寺さんは家事をしない』など。無類の旅好き。近著に『58歳、旅の湯かげん いいかげん』。インスタグラム:@marikosatoru
城崎温泉──伝統とアートが出合い、進化を続ける湯の街
開湯1300余年。湯治客を癒やし、文人に愛されてきた温泉場で、現在は国内外のクリエイターが足繁く訪れるアートな地。その魅力を感じる街歩きへ。
城崎を「街全体がひとつの宿」と語るのは漫画家のひうらさとるさん。この地に移住して10年、木造3階建ての家が続く街並みを愛で、街の随所にある外湯に浸かり、地元の幸を味わい……と、まさに旅のような日々を送る。しかしこの街の良さはそれだけじゃない。
「舞台芸術に関わるアーティストや建築家、デザイナーといった人たちが城崎での滞在を気に入って、さらにおもしろい人を連れてくる。人が人を呼ぶ街になっているんですよ」とひうらさん。
新たなカルチャーの発信源として注目され、センスを感じるショップや飲食店も増えてきた。
「歴史ある街ながら、最近は若い人たちがお店をオープンして、街が元気なのが城崎の特徴。歩いて回れるコンパクトさも魅力です」
一の湯
江戸の名医も絶賛した“天下一”の湯
7つある外湯のひとつ。温泉街の中心、大谿川にかかる王橋のたもとにあるランドマーク的存在。さらりとした感触の湯は肌へのあたりもやわらかい。自然石を利用した洞窟風呂が名物。
温泉寺
古くから湯治客を迎えた温泉守護の寺へご挨拶
起源は養老元(717)年。難病の人々を救おうと千日の祈願をし、霊泉を湧出させたという、「道智上人」が開創。かつてはここで湯治の作法を教わり、湯杓を授かって初めて城崎の湯に浸ることが許された。温泉に入る前に一度ここで参拝してみては。
城崎国際アートセンター
世界と城崎をつなぐ、舞台芸術・アートの拠点
舞台芸術に携わるアーティストが宿泊し、制作に打ち込める場として2014年に誕生。演劇界の大御所から若手まで、国内外から多くのクリエイターが訪れる。「通し稽古の公開やワークショップを通じて交流することも。1階の柱に書き込まれたメッセージを読むのも楽しい」とひうらさん。
城崎文芸館
お湯に癒やされ生まれた、新旧の“温泉地文学”を
歴史と文学と出で湯のまち”ならではのミュージアム。城崎をテーマにした展示では志賀直哉をはじめとする文豪の作品から万城目学や湊かなえといった現代の人気作家による書き下ろしまでカバー。文学に見る城崎の魅力が感じ取れる。
『クロワッサン』1148号より
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