暮らしに役立つ、知恵がある。

 

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フードライター渡辺“P”紀子さんがおすすめする“美食”の宿──いま泊まりたい、くつろぎの宿

磨き込まれた技術が尽くされた美味しくて軽やかな料理に出合う。至福のオーベルジュ2軒をフードライター渡辺“P”紀子さんに教えてもらいました。

撮影・MEGUMI(Villa della pace)、志鎌康平(山菜料理 出羽屋) 文・渡辺”P”紀子

【推薦者】渡辺“P”紀子(わたなべ・みちこ)さん
フードライター
文化出版局を経てフリーの料理記者に。通称“Pさん”。食関係の冊子、料理本の企画・編集に携わり、全国のおいしいものを訪ねる日々。

渡辺“P”紀子さんに聞いた、大人が心地よい宿の条件って?
ローカルな良さに満ち、細かなところで常にアップデートしていること──「器や食材、宿のしつらえ。地元の人にとっては当たり前すぎて気づいていないような土地の素晴らしさをちゃんとすくい上げていて、さらに何度行っても新しい発見があると、遠くても足を運びたくなる宿だと感じます」

Villa della pace(石川県・七尾市)

日々、マイナーチェンジを繰り返しているというスペシャリテ「畑」。野菜の他、バジルとうるかのソースやチーズが隠れている
日々、マイナーチェンジを繰り返しているというスペシャリテ「畑」。野菜の他、バジルとうるかのソースやチーズが隠れている

能登の里山・里海の幸と暮らしの知恵が満載

豊かな里山・里海の幸に恵まれた能登。その象徴ともいうべきひと皿が「畑」(上写真)である。70種類もの野菜やハーブを、グリルしたり、茹でたり、蒸したりとそれぞれに調理し、ギュッと盛り込んだ平田明珠シェフのスペシャリテだ。能登の美しい自然を丸ごといただく気分である。

シェフは、昨年能登を襲った震災の直後から、被災しながらも炊き出しに動き回った。以降、料理に対する考えが随分と変わった。失われつつある能登の食文化を新たな視点で現代料理へと昇華させ、未来へと繋げていきたい。強くそう思うようになった。そこで、自らの料理を「饗藝料理」と名付け、保存食や祭り料理など、昔ながらの生活に根ざした食を研究。より能登を感じる料理を提供するようになった。といっても、小難しい料理では決してない。美しく軽やか。イタリアンがベースの変化に富むコースである。ワインを飲んで、別棟でゆっくりと休み、和食の朝食で体を整えて、次の旅へ。

メインの例。自然豚のグリルに、雑穀、青梗菜、トマト、オクラ、とうもろこし、空心菜を添えて
メインの例。自然豚のグリルに、雑穀、青梗菜、トマト、オクラ、とうもろこし、空心菜を添えて
同じくコース例。輪島の「なすそうめん」をパスタ風に。なすのオランダ煮と焼きなすのジュース、あわび、わらびと
同じくコース例。輪島の「なすそうめん」をパスタ風に。なすのオランダ煮と焼きなすのジュース、あわび、わらびと
レストラン棟の奥には、穏やかな内海が広がる。宿泊棟は、庭を挟んで向かい側に
レストラン棟の奥には、穏やかな内海が広がる。宿泊棟は、庭を挟んで向かい側に
シェフの平田明珠さんと、サービスを預かる妻の靖子さん。1日最大6名、心と技術の尽くされたコース料理がふるまわれる
シェフの平田明珠さんと、サービスを預かる妻の靖子さん。1日最大6名、心と技術の尽くされたコース料理がふるまわれる
メインの例。自然豚のグリルに、雑穀、青梗菜、トマト、オクラ、とうもろこし、空心菜を添えて
同じくコース例。輪島の「なすそうめん」をパスタ風に。なすのオランダ煮と焼きなすのジュース、あわび、わらびと
レストラン棟の奥には、穏やかな内海が広がる。宿泊棟は、庭を挟んで向かい側に
シェフの平田明珠さんと、サービスを預かる妻の靖子さん。1日最大6名、心と技術の尽くされたコース料理がふるまわれる

石川県七尾市中島町塩津乙は部26-1 TEL:0767-88-9017 1泊1名4万2000円(夕朝食付き)。宿泊は1室のみ、最大4名まで宿泊可。レストランだけの利用も可能、要予約。http://villadellapace-nanao.com/

フードライター渡辺“P”紀子さんがおすすめする“美食”の宿──いま泊まりたい、くつろぎの宿

山菜料理 出羽屋(山形県・西川町)

山菜盛り合わせ。左から、うるい、きぶのり、ニリンソウ、アイコ、ジュウナ、アカコゴミ。からし醤油やくるみで和えたりと、さまざまな味付けを楽しむ一皿
山菜盛り合わせ。左から、うるい、きぶのり、ニリンソウ、アイコ、ジュウナ、アカコゴミ。からし醤油やくるみで和えたりと、さまざまな味付けを楽しむ一皿

唯一無二の山菜料理のシェフズテーブル

山形・月山の麓にある山菜料理専門の宿、『出羽屋』。創業昭和4(1929)年。いかにも老舗な堂々たる建物を入ると、囲炉裏端で大女将が迎えてくれる。

当主・佐藤治樹さんで4代目となる。4代目になって、店には大きな変化があった。旅館の料理と併せて、シェフズテーブルという1日1組の山菜尽くしのコースを始めたのである。手入れの行き届いた庭に面した、清潔感あふれるキッチン。珍しい山菜やきのこ、川魚や熊など、食材について、生き生きと説明してくれる。当主、実はこれがしたかったのである。子どもの頃から、山とともに生きてきた。毎日、山に入り、たくさんの食材に触れてきたからこそ、伝えられること、伝えたいこと。客はワクワクしながら話を聞き、山の風景をイメージしながら、考え尽くされた料理を口にする。最高ではないか。

弟の明希菜さんは月山の雪解け水で野菜を育て、料理人として旅館料理を担当。兄をサポートする。

コースには鍋がつく。写真は、山形地鶏の出汁に、ねぎ、たけのこ、地鶏、じゅんさいをたっぷりと
コースには鍋がつく。写真は、山形地鶏の出汁に、ねぎ、たけのこ、地鶏、じゅんさいをたっぷりと
写真はすべてコースの一例。平飼い卵を使った焼きなす入り冷製茶碗蒸し。夏の山菜・アオミズとともに
写真はすべてコースの一例。平飼い卵を使った焼きなす入り冷製茶碗蒸し。夏の山菜・アオミズとともに
2023年に誕生したシェフズテーブル。1日1組のみ、最大8名まで。四季折々に変化する庭の美しさとシェフの山菜愛を堪能できる特別席。予約はお早めに
2023年に誕生したシェフズテーブル。1日1組のみ、最大8名まで。四季折々に変化する庭の美しさとシェフの山菜愛を堪能できる特別席。予約はお早めに
シェフズテーブル利用の場合は、月山から移築したという”蔵部屋”に宿泊
シェフズテーブル利用の場合は、月山から移築したという”蔵部屋”に宿泊
シンプルながら居心地よく整った純和風の宿泊室内
シンプルながら居心地よく整った純和風の宿泊室内
コースには鍋がつく。写真は、山形地鶏の出汁に、ねぎ、たけのこ、地鶏、じゅんさいをたっぷりと
写真はすべてコースの一例。平飼い卵を使った焼きなす入り冷製茶碗蒸し。夏の山菜・アオミズとともに
2023年に誕生したシェフズテーブル。1日1組のみ、最大8名まで。四季折々に変化する庭の美しさとシェフの山菜愛を堪能できる特別席。予約はお早めに
シェフズテーブル利用の場合は、月山から移築したという”蔵部屋”に宿泊
シンプルながら居心地よく整った純和風の宿泊室内

山形県西村山郡西川町間沢58 TEL:0237-74-2323 上写真のシェフズテーブルの夕食付きプランは1泊1名4万4000円(夕朝食付き)。通常料理の場合は2万2000円~。https://www.dewaya.com/

フードライター渡辺“P”紀子さんがおすすめする“美食”の宿──いま泊まりたい、くつろぎの宿
*紹介している宿泊料金は2025年7月現在のものです。また、サービス料、宿泊税、入湯税などが別途かかる場合があります。

『クロワッサン』1148号より

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