大都会の恩恵を受けながら狭小住宅で賢く倹約──ブロガー、ライター・大木奈ハル子さんの工夫やセンスが光る楽しい暮らし
撮影・黒川ひろみ 文・恒木綾子
東京・港区の真ん中に佇む築50年の分譲マンション。そのわずか30㎡足らずのワンルームに、夫と愛犬と暮らしているライターの大木奈ハル子さん。
「結婚当初は夫が所有していた大阪の85㎡のマンションに住んでいました。でも、毎月約15万円の住宅ローンとカーローンの返済で生活に余裕がなかったことや、物が溢れ返っていたことに嫌気がさし、マンションを売却。その売却益でローンを完済し、残金で別のマンションを購入したものの、なんと夫の転勤で東京に引っ越すことに」
そこで選んだのが、夫の職場まで徒歩圏内だったこのマンション。上京当時は、ひと回り広い別の部屋に月8万円の賃料で住んでいたものの、夫の転職を機に今の部屋を購入。しかし当初は驚くほどボロボロだったそう。
「もともと1Kだった部屋を12畳ほどのワンルームにリフォームしました。業者に頼むと高くつくので、アプリで探した個人の便利屋さんに間仕切りや押し入れの解体のみを15万円で依頼。壁の塗り替えなど、それ以外の部分はすべて自力でやったので、資材費などひっくるめて50万円ほどで済みました」
家のサイズに合わせて片づけも決行。
「物ごとに置き場を決め、そこにお気に入りのものやよく使うものから入れていき、溢れたものは処分しました」
家が狭くなるにつれて水道光熱費も大幅ダウン
こうしてスタートした狭小住宅での暮らしには、思わぬ節約ポイントが。
「部屋が狭ければ狭いほど、光熱費はとても安く済みます。85㎡の家に住んでいたときは、電気代だけで1万円を超えていたのですが、今は犬のためにエアコンを24時間つけっぱなしにしていても、電気代、ガス代、水道代、全部込みで1万円かからないほど。お風呂も小さいので、水道代やガス代も全然かからないんですよ」
さらに、狭小の築古物件といえど、ここは東京の一等地。利便性に優れた都会ならではの倹約メリットも。
「まず、車がいりません。駅近ゆえに周辺に安い飲食店もたくさんありますし、家の向かいがコンビニなので、ストックの必要がなく、家にそのための収納スペースもいらない。近所にWi-Fi完備のノマドスポットが無数にあるためワークスペースを作る必要もないし、家でインターネットを使うときはスマホのテザリングで済みます。何より、都心の駅近物件は価格が下がることがなく、購入時と同額以上で売却できるので、その間の家賃は実質ゼロというのが最大の魅力だと思います」
現在のひと月あたりの支出の内訳は、管理費や修繕積立費などの住居費が約5万円、光熱費と通信費が各約1万円、娯楽費と食費が各約5万円ほど。
「家が狭く、あまり物を所有できない分、趣味の陶芸や旅行、好きなアーティストのライブに行ったりする娯楽費、仕事にも直結している外食費など、“体験”にはお金をかけたいと思っています。ただし、娯楽費と食費で10万円を超えないことが自分の中での目安。そのために欲しいものは厳選し、ただ安いからと買うのではなく、フリマアプリなどを利用して本当に欲しいものをできるだけ安く探したり、フードシェアリングアプリを使って一流の食事を安価で楽しんだりしています」
狭いながらも、ポップでこだわりがたくさん詰まったこの部屋が体現しているように、住居費や光熱費など、絞れる部分はとことん絞り、好きなものにはお金をかける。このメリハリこそが、大木奈さん流の節約を楽しむ秘訣。
「欲しいものをできるだけ安く買うことは、ワクワクするし、趣味にもなっています。節約生活というと我慢を強いられるようなイメージがありますが、アイデア次第でいくらでも楽しく暮らせるものだなと日々感じています」
大木奈さんの住まいの変遷
大卒後10年ほど
実家住まい。
2010年ごろ(34歳ごろ) @京都
幅1.7m 奥行き10mの、町家住宅のはなれ(物置小屋)に1人暮らし。
2015年(39歳) @大阪
結婚。夫が住んでいた85㎡4LDKのマンションで暮らす。
2016年(40歳) @大阪
マンションを売却。50㎡2DK、築40年の分譲マンションを750万円で購入し、100万円かけてリフォーム。1年後、夫の親からの借金を完済。
2017年(41歳) @東京
家賃8万円、30㎡の賃貸マンション。
2022年(46歳) @東京
同じマンションのさらに小さい別の部屋を購入(現在の住まい)。
2024年(48歳) @東京
25㎡(12畳ワンルーム)、築50年の分譲マンションを購入。今年8月に引っ越し予定。
『クロワッサン』1146号より
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