歴史を知れば景色が変わる。今と昔をつなぐ大河ドラマ『べらぼう』の魅力──南天さん×ぬえさん
イラストレーション・南天 文・堀越和幸
南天さん(以下、南天) ぬえさんは昔から大河ドラマを観ていたんですか?
ぬえさん(以下、ぬえ) 子どもの頃は親が観ていたので家でついていたという感じでした。
南天 ああ、夜は子どものチャンネル権はありませんもんね(笑)。
ぬえ そう(笑)。なので、意識的に観るようになったのは六代目市川染五郎さんが主演した『黄金の日日』くらいからだったでしょうか。南天さんはどうですか?
南天 私は緒形拳さんの『峠の群像』、渡辺謙さんの『独眼竜政宗』あたりの印象が強いです。大河ドラマは“歴史のドア”というか、教科書でしか知らなかった人物を見られるのが楽しかったです。
ぬえ 私は家族で旅行へ行った先で、神社仏閣や旧跡などの案内看板があると必ずチェックして、そこに大河ドラマに出てくる人の名前を見つけることに喜びを見出す子どもになっていました。
南天 今回の『べらぼう』ではどこかゆかりの地を訪れましたか?
ぬえ 吉原神社へお参りに。そこで明治、大正、昭和版が載っている古地図を買いまして、当時花魁道中が行われた通りが今も商店街の道として残っていてびっくり。
南天 そうなんですよね。S字カーブの具合とかがそのまま残っていて。
ぬえ 蔦重(横浜流星)のお店はこの辺? 九郎助稲荷があったのは? って、お陰でいちいち頭の中の地図と照らし合わせてドラマを観る癖がついてしまった。
南天 私は登場人物の着物の柄につい目を奪われてしまいます。
ぬえ ああ、それ、わかります。
南天 たとえば地本問屋の鶴屋さん(風間俊介)はよくトンボ柄の羽織を着ているんですよね。
ぬえ トンボは“勝ち虫”と呼ばれ、不退転・不屈の象徴でした。
南天 はい、着る物や髪型にその人の素性が表されているという。
ぬえ 前に予習も兼ねて、蔦重に絡む江戸の文化人の朋誠堂喜三二や恋川春町、平賀源内の作品を読んでみたんです。で、共通するのは反骨精神があるのに肩の力が抜けている、カッコつけないカッコ良さがあるということでした。
南天 なるほど。しかもドラマは明和の大火事から始まるわけで、丸ごとなくなってもそれでも生きていけるという、底力とおおらかさを感じますね。
ぬえ 江戸っ子の粋、ですよね。
南天 現代の私たちも見習うべきところは多いかも。
ぬえ 先日知り合いを訪ねてある下町に行ったら、昼の3時に風呂上がりと見えるおじいちゃんが銭湯の縁台で将棋を指していました。
南天 いいですねえ。東京にはまだ生活としての江戸が残っている。
ぬえ はい。一方で東京は寄席もあるし、歌舞伎だって楽しめる。
南天 今度お江戸巡りしましょう。
オンラインで只今、絶賛連載中!
のちに江戸のメディア王と呼ばれた蔦屋重三郎が主人公の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK/日曜夜8時〜)。クロワッサンオンラインではぬえさんと南天さんが各話を振り返り、考察しています。ドラマの理解が深まる、味わいが増すと好評のこの連載は、毎週土曜日の朝に更新。公開済みの記事をまとめてお読みになりたい方は、こちらからどうぞ。
『クロワッサン』1145号より
広告