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『日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで』水戸芸術館現代美術ギャラリー ──「ひとり」から始まって「だれかと」会うアート

青野尚子のアート散歩。今回の展覧会のキーワードは「橋」。展覧会では橋の上で実感した「ひとり」、積み木の「色」など日比野の子ども時代を振り返るところから始まる。

文・青野尚子

「オートバイ」(1984) 撮影:竹内裕二
「オートバイ」(1984) 撮影:竹内裕二

1980年代前半、ダンボールを素材にしたポップなオブジェやドローイングで一躍脚光を浴びた日比野克彦。それから40年あまり、活動の領域を広げてきた彼の個展が開かれている。

今回の展覧会のキーワードはタイトルにもある「橋」だ。日比野は幼い頃、ふいに一人ぼっちになったとき、橋の上で初めて「ひとり」を実感したのだそう。そして「だれかと」会いたい、コミュニケーションしたいという思いから絵を描いている、と語る。

実際に彼は「だれかと」コミュニケーションするようなアートへと針路を変えてきた。その一つが2003年から始めた《明後日朝顔プロジェクト》だ。みんなで朝顔の蔓を這わせるロープなどを設置し、苗を植えて花を咲かせ、種を採る。「明後日」とついているのは「明日のその次を思い描く」という思いから。一緒に朝顔を育てることで人と人、人と地域がつながる。

展覧会では橋の上で実感した「ひとり」、積み木の「色」など日比野の子ども時代を振り返るところから始まる。《明後日朝顔プロジェクト》などは絵本作家でイラストレーターの大橋慶子が絵本化する。会期中にはチームごとにダンボールでゴールとボールを作り、Tシャツに絵を描いたユニフォームでミニサッカーをプレイする「HIBINO CUP」などのイベントやワークショップも。幼い日比野が一人で立っていた橋は川や海を越えて人をつなぐものでもある。いろんなところにたくさんの橋がかかる展覧会だ。

「明後日新聞社文化事業部」(2003-)2003年の様子 写真提供:HIBINO SPECIAL
「明後日新聞社文化事業部」(2003-)2003年の様子 写真提供:HIBINO SPECIAL

『日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで』

水戸芸術館現代美術ギャラリー 開催中~10月5日(日)

芸術祭のプロデュース、東京藝術大学長など多分野からアートに携わる日比野さん。彼の作品だけでなく、関係者のコメントなどで多岐にわたる活動を紹介する。

水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城県水戸市五軒町1-6-8)  TEL:029-227-8111 10時~18時 月曜休(8月11日、9月15日は開館、8月12日、9月16日休) 入場料一般900円ほか
《種は船・明後日丸》(2007/2025)
《種は船・明後日丸》(2007/2025)
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1146号より

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