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『ゴッホ・インパクト──生成する情熱』ポーラ美術館で堪能する、ゴッホの情熱が生んだ絵との対話

青野尚子のアート散歩。今回は、アートファンだけでなくアーティストも虜にするゴッホの秘密に迫る展示『ゴッホ・インパクト|生成する情熱』。

文・青野尚子

フィンセント・ファン・ゴッホ 《アザミの花》 1890年 ポーラ美術館
フィンセント・ファン・ゴッホ 《アザミの花》 1890年 ポーラ美術館

生前はほとんど評価されなかったけれど今では展覧会が何度も開かれ、そのたびに大勢の観客がつめかけるゴッホ。アートファンだけでなくアーティストも虜にする彼の秘密に迫る展示「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」が行われる。

ゴッホは1890年に37年の短い生涯を終えるが、没後まもなく彼の作品はさまざまな形で注目されるようになる。1901年に初めてゴッホの作品を見た画家、モーリス・ド・ヴラマンクはゴッホの激しい筆触からインスピレーションを得たと思われる絵画を描いた。日本では1910年に創刊された文芸雑誌『白樺』でゴッホが紹介され、岸田劉生らに影響を与える。ゴッホが最晩年を過ごしたオーヴェールを訪れた前田寛治は「何時まで経っても覚めることが出来ない」狂気を感受、ゴッホと弟テオの墓を描く。中村彝は日本にもたらされた《向日葵》(1888年、戦災で焼失)と似通った《向日葵》を描いた。

森村泰昌 《自画像の美術史(ゴッホ/青い炎)》 2016年(平成28) ポーラ美術館 copyright the artist, courtesy of ShugoArts
森村泰昌 《自画像の美術史(ゴッホ/青い炎)》 2016年(平成28) ポーラ美術館 copyright the artist, courtesy of ShugoArts

ゴッホは現代のアーティストたちにも影響を与えている。名画の登場人物や俳優たちに扮装したセルフポートレイトで知られる森村泰昌が初めて扮装したのはゴッホの自画像だった。彼は「最初に教えられる『美術』といえばゴッホ」だったと語っている。そのほかにも福田美蘭やフィオナ・タンらの作品が並ぶ。

絵画に情熱を注いだゴッホと、その情熱に動かされた後世のアーティストたち。時代を超えた対話が紡ぎ出す物語を堪能したい。

『ゴッホ・インパクト──生成する情熱』

ポーラ美術館 5月31日(土)~11月30日(日)

ポーラ美術館で収蔵するゴッホの油彩画3点も出品される。そのほかにセザンヌやマティス、佐伯祐三、福田美蘭らの作品も。またイギリスの現代美術作家ライアン・ガンダーの『ユー・コンプリート・ミー』展を同時開催。

ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285) TEL:0460-84-2111 9時〜17時 会期中無休 入館料一般2,200円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1142号より

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