認知症でかなり弱っている母に優しくできません【信田さよ子さんのお悩み相談室】
撮影・イラストレーション・椎木彩子 文・長谷川未緒
みなさんの悩みに、ストレートにお答えします。
弱った母に優しくできない
母が認知症でかなり弱ってきています。自分の価値観を押し付けてくる人で、従うのがある意味当然だと思って生きてきました。そのおかげか、普通よりもいい人生を送れていると思いますし、自分自身の人生に後悔があるわけでもありません。ですが、こうなってみると自分がずっと母親の顔色を窺いながら生きてきたことにも気が付きました。もうまともに話し合えないのに怒りが湧いて、自分でも驚くほど優しい気持ちになれません。(50代・会社員)
優しくできなくてもいい! 自分のメンタルを最優先に。
別に優しくなれなくていいんですよ。娘は母親に優しくしなければならないという法律があるわけでもないですし、優しくなれないのには、それだけの理由がある。
ですからそういう自分を否定せず、認めてあげてくださいね。ずっと母親にほめられようと生きてきた部分も大きいでしょうし、罪悪感を抱いておられるかもしれませんが、その罪悪感には根拠がないということを知ってください。それに、どういう態度を取ったとしても、娘には少なからず罪悪感が残るものです。
どうしても優しくしたければしたらいいけれど、お母さまが感謝するのは面倒を見てもらいたいからであって、心から「ありがとう」と言ってはくれないのでは? こういうケースで一番避けたいのは、優しくしなければとギリギリまで無理した挙げ句に、取り返しがつかないひどいことを母親に言ってしまうこと。そうなるとご相談者も深く傷つくことになりますから、あくまでも自分基準で、負担にならないように接していくことが鉄則です。
『クロワッサン』1123号より
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