映画『バービー』を盛り上げる、シンディ・ローパー1983年のヒット曲【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
シンディ・ローパー「Girls Just Want to Have Fun」
新時代のフェミニズム映画を彩る40年前の女性讃歌。
1959年の発売以来、世界中で愛され続けているマテル社のファッションドールを実写映画化した『バービー』。去年の夏に公開されて2023年世界最高の興行収入を記録した大ヒット作品が、早くも配信で楽しめるようになりました。
女性をエンパワメントする新時代のフェミニズムムービーとして絶賛されている『バービー』は、映画のテーマを補強する音楽のセレクションも大きな魅力。バービーたちが毎夜繰り広げるガールズナイトを盛り上げるのはシンディ・ローパーが1983年に放ったヒット曲、「Girls Just Want to Have Fun」です。
この曲は最も有名な女性讃歌のひとつですが、実はもともと男性ミュージシャンが書いた曲がシンディに巡ってきた経緯があります。
当初は遊び人の男が「俺たち男は幸運だよな。だって女の子たちだって楽しもうとしているんだから」とほくそ笑むホモソーシャルな内容だったところ、シンディが「私たち女は不幸だよね。だから女の子だってもっと楽しみたいんだよ」と歌詞を改変。女性が自由を希求する歌に生まれ変わりました。
発表から40年を経た現在もびくともしない「Girls Just Want to Have Fun」の強度は、こうした成り立ちとも無縁ではないのかもしれません。同時期にデビューしたマドンナの革新性の陰に隠れがちですが、シンディもまた女性の権利向上に非常に意識的なシンガーだったのです。
『クロワッサン』1107号より