BTSのV初のソロアルバムは、ジャズを基調とした傑作【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
V 『Layover』
人肌恋しい季節のお供に。BTS人気メンバーのジャジーな傑作。
BTSのボーカル担当のひとり、Vが初のソロアルバム『Layover』を発表しました。昨年10月に同じくボーカル担当ジンの「The Astronaut」を皮切りにスタートしたBTSのソロ展開も、これをもってようやく一巡したことになります。
BTSの7人の中でInstagramの最多フォロワー数を誇るVは、セリーヌやカルティエといった世界的ハイブランドのアンバサダーを務める人気メンバー。まさに一般的なK-POPスターの優美なイメージを体現する存在ですが、今回の『Layover』はそんな彼の印象にちょっとした変化をもたらすことになると思います。
ここでVが打ち出しているのは、普段彼が嗜んでいるジャズを基調としたサウンド。伝説のジャズミュージシャン、チェット・ベイカーへの憧憬に満ちた内容は、他のBTSメンバーのソロ作で聴けるトレンドのヒップホップやダンスミュージックとは明らかに一線を画しています。
アナログ感のある穏やかでノスタルジックなサウンドと、聴き手との緊密な距離感のメロウで物憂げな歌声。そして、その双方が溶け合うことによって生じる白昼夢の中をたゆたうような感覚。これは人肌恋しい季節のお供に最高の音楽でしょう。
BTSの同僚が次々と華々しい成果を上げていく中、チャートやセールスは二の次とばかりに自分が本当にやりたかったことを追求したV。そんな彼の志が、この傑作を一層魅力的にしているのかもしれません。
『クロワッサン』1106号より