暮らしに役立つ、知恵がある。

 

広告

音楽の普遍性が感じられる3枚組ベスト。竹内まりや『Turntable』

文・神舘和典

時間が経過しても懐メロにならない、普遍性をまとったポップミュージックは、何が特別なのか――。

そのヒントを竹内まりやさんの作品に見つけられる。失った恋を描いても、許されざる愛を描いても、どこかに希望が感じられるのだ。希望は色褪せない。だから、1970年代、’80年代の曲も今が感じられる。かつてそんな感想を伝えたら、本人にはとくに意識はなく、気づくと歌に希望が盛り込まれているそうだ。

「でき上がった曲を並べて、結果としてどの作品にも希望が見えるとしたら、それは私の性分というか、人生観のせいかもしれません」

音楽は生き物。作り手や歌い手の生き方がどうしても音に表れる。

竹内まりや『Turntable』1978年のデビューから40年間の初CD化曲、セルフカバー、洋楽カバーなど全62曲。山下達郎とのデュエット曲「For Your Love」や映画『ダンボ』の主題歌も収録。ワーナーミュージック・ジャパン 4,000円。
竹内まりや『Turntable』1978年のデビューから40年間の初CD化曲、セルフカバー、洋楽カバーなど全62曲。山下達郎とのデュエット曲「For Your Love」や映画『ダンボ』の主題歌も収録。ワーナーミュージック・ジャパン 4,000円。

9月4日にリリースされる、竹内さんのデビュー40周年記念アルバム『Turntable』は3枚組。

1枚目は、過去のベスト盤に収められていないモア・ベスト集。2枚目は、ほかのアーティストに書いた曲のセルフカバーや自身の曲の別テイク。3枚目は、洋楽のカバー集。シンガーとして、ソングライターとして、さらにリスナーとしての竹内さんの歩みも聴くことができる。

女性シンガーの多くは、年齢を重ねるとともに声が低い音域に移行していく。ところが、竹内さんの声は20代のころからほとんど変わっていない。アルトあたりの音域でずっと音の物語を歌っている。

そして、一緒に歌い演奏するメンバーが変わると、竹内さんはまるで別のシンガーであるかのように、違う風景やシーンを見せてくれる。

3枚目の洋楽のカバー集では、杉真理さんらのバンド、BOXとビートルズナンバーを歌うと、港町リバプールの匂いを感じる。センチメンタル・シティ・ロマンスと共にイーグルスの「Tequila Sunrise」を歌うと、アメリカ西海岸のさわやかな風が吹く。2年前にこの世を去ったギタリスト、松木恒秀さんが率いたWhat is HIP?と一緒にザ・バンドの「Out Of The Blue」を歌うと、土の香りがしてくる。

まぶたを閉じて聴くと、鮮やかに景色が見え、風の匂いがする。

デビューアルバムから40年間の音の歩み

モア・ベスト集は、結婚前、結婚後、両方のレーベルのCDから選曲。

『Beginning』
『Beginning』
『UNIVERSITY STREET』
『UNIVERSITY STREET』
『Love Songs』
『Love Songs』
『REQUEST』
『REQUEST』
『Bon Appétit!』
『Bon Appétit!』
『TRAD』
『TRAD』
『Beginning』
『UNIVERSITY STREET』
『Love Songs』
『REQUEST』
『Bon Appétit!』
『TRAD』

『クロワッサン』1004号より

広告

  1. HOME
  2. 音楽の普遍性が感じられる3枚組ベスト。竹内まりや『Turntable』

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載