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【前編】91歳で講義に立ち続ける東城百合子さん。その元気の源を聞く。

91歳で料理教室の講義に立ち続ける東城百合子さん。その元気の源を教えてもらいました。
  • 撮影・小出和弘  文・後藤真子

自然食・自然療法研究家として知られる東城百合子さんは、大正14年生まれの91歳。いまも元気に出勤しているという、東京都内の事務所を訪ねた。東城さんが主幹をつとめる「あなたと健康社」は、昭和48年創刊の月刊誌『あなたと健康』を発行しているほか、月曜から土曜まで健康料理教室を開催している。東城さんはほぼ毎日出勤し、料理教室で講義もしているというので、まずは教室を見学させてもらうことに。朝10時、教室ではエプロン姿の参加者たちが、料理講師の指導のもとでこの日の課題料理の下ごしらえに忙しく、てきぱきと作業していた。

2時間の料理教室のうち、東城さんの講義が約1時間半。そのあと講師と参加者が調理をする。やがて東城さんが現れると、生徒たちは背筋を伸ばし、場の空気が一瞬で引き締まるのが感じられる。東城さんは立ったまま、一同の前で話し始めた。

「食事のとき、自分が使った箸をどこに置いたらいいかわかる? 渡し箸(食器の上に箸を渡して置く)は縁を切るからだめ。箸置きか、それがないなら箸先だけを食器にかけるの。汚れた箸先は、人のほうへ向けちゃだめ。箸の使い方ひとつから生活は始まっているのよ」

月曜から土曜までクラス別に開催される健康料理教室で、ほぼ毎日、1時間~ 1時間半の講義を行っている。立ちっぱなしで、参加者たちを叱咤激励

マイクを使っているとはいえ、大きな声には張りがあり、はきはきとして明朗だ。矍鑠(かくしゃく)とは、まさに東城さんのような人のためにある言葉だと思わされる。

「料理も、掃除や洗濯も、自分で工夫して努力するものです。手と足を動かして、しっかり生活すること。それが、生きることを一生懸命やるということなの。理屈ばっかりで頭でっかちになってはだめ」

ときに生徒に質問を投げ、応答しながら進めていく。原稿を読むのではなく、生徒一人一人と目を合わせながら淀みなく話す。ときに生徒に質問を投げ、応答しながら進めていく。原稿を読むのではなく、生徒一人一人と目を合わせながら淀みなく話す。

「命のもとは一つなのよ。自分の命、野菜の命、魚の命、動物の命、この命を育ててくれたのはお天道様。だから自然に感謝して命をいただく。食べることは、生きることです」

1時間超、立ちっぱなしでも疲れた気配は見せず、終始「伝えたい」という熱意をみなぎらせたそのパワーには、驚かされるばかり。

「食べることは、生きること」と東城さん。

話が終わると、再び教室は、料理に取りかかる参加者たちの活気に包まれる。この日のメニューは玄米ご飯、肉を使わずかつお節や醤油を使った和風カレー、味噌汁、手作りの梅ドレッシングで味わう大根とふのりのサラダ、福神漬け、ごまクラッカー。

食材や調味料の選択から調理法まで、東城さんの自然食・自然療法の考え方を反映した内容だ。がんや鬱病になったことがきっかけで、いままでの生活や食事を見直し、一から改善しようと通ってくる人が多いというが、誰もが明るく、真剣かつ楽しんでいる様子が印象的だ。

季節の山菜や野草は、自然の力がみなぎる食材として東城さんが特にすすめているもののひとつ。そこで、この日たまたま差し入れに届いた新鮮なよもぎとつくしの使い方を、急きょ、料理講師が指導する場面も。よもぎは手早く天ぷらに、つくしはだしで煮ていただくことに決まり、この日の料理教室のメニューはより豊かなものとなった。

つくしとよもぎ。野草は自然療法で重 要な食材。

『クロワッサン』949号より

●東城百合子さん あなたと健康社 主幹/自然食・自然療法研究家。著書『家庭でできる自然療法』は昭和53年の初版以来、宣伝なしで100万部を超えて読み継がれている。

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