笑いと涙の一大“エンタメ大河”が熱い!『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』
文・知井恵理
年が明け、いよいよ来年はオリンピックイヤー。史上2度目の東京開催を記念するかのように、今年の大河ドラマも「東京」と「オリンピック」が舞台だ。とはいえ、第1回の放送を終えて、スポーツの話に留まらないエンターテインメント大河の様相を見せている。
主人公は、日本人初のオリンピック選手でマラソン代表の金栗四三と、1964年東京オリンピック招致のキーマン、田畑政治の2人。金栗の生い立ちや競技生活から、田畑の誘致活動へとリレーする形で物語が進む。その間に、柔道の父と呼ばれるアジア初のIOC委員となった嘉納治五郎や、昭和の名噺家である古今亭志ん生も登場するのだが、2人とどう絡むかはこれからのお楽しみ。
金栗四三と田畑政治の人となりについて、演者である中村勘九郎さんと阿部サダヲさんは、
「金栗四三は、とにかくまっすぐな人。まっすぐすぎて家族に迷惑をかけることもあるけれど、自分が信じた道をまっすぐと進む。演じながら、自分も衿を正さねばという思いになります」(中村さん)
「田畑政治という人は、一言で言うと猪突猛進。非常にせっかちだったそうで、焦ってタバコを吸おうとして、火のほうをくわえてしまうシーンがありますが、それも実話に基づいているんです」(阿部さん)
脚本を手がけるのは宮藤官九郎さん。演者が自由に表現できるようにと、脚本にはト書きがないという。個性の強い人物を、実に魅力的に演じる2人に要注目だ。もちろん、宮藤さんの真骨頂ともいえる、軽快なテンポ、スピーディな展開、伏線だらけのシナリオは今回も健在。連続テレビ小説『あまちゃん』を彷彿させる、随所の笑いどころも必見だろう。
そして、このドラマを支えるのは、なんといっても「熱量の高さ」。オリンピックという勝負の場に挑む主人公が熱いのは当然だが、周囲の人物も実に熱く、暑苦しい。でも、愚直なまでに一生懸命な姿は、暑苦しさを通り越して清々しささえ覚える。
笑って泣けて一本とられ、いつの間にか熱さが伝播する。そんな痛快熱血な“一大創作落語”は、まだ始まったばかり。さあさあ、ご覧じろ。
『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』
58作目の大河ドラマ。NHK総合・日曜夜8時~8時45分(全47回) 作:宮藤官九郎 音楽:大友良英 題字:横尾忠則 噺:ビートたけし 出演:中村勘九郎、阿部サダヲ、綾瀬はるか、生田斗真、役所広司ほか
『クロワッサン』989号より