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考察『豊臣兄弟!』5話 戦国の三英傑が集結! 出世に燃える木下藤吉郎秀吉(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)

大河ドラマ『豊臣兄弟!』 (NHK/日曜夜8:00〜)は主人公・小一郎(仲野太賀)と兄・藤吉郎(池松壮亮)の兄弟物語。第5回「嘘から出た実(まこと)」では、信長、秀吉、家康の戦国の三英傑が一堂に。御前試合や調略を通して出世に燃える藤吉郎は果たして……。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと絵師・南天さんが考察する連載第5回です。

文・ぬえ イラスト・南天 編集・小池貴彦

戦国の三英傑、ここに集結!

『豊臣兄弟!』5話イメージイラスト/鵜沼城の主・大沢次郎左衛門(松尾諭)と妻・篠(映美くらら)の美しい夫婦愛が描かれた/南天
『豊臣兄弟!』5話イメージイラスト/鵜沼城の主・大沢次郎左衛門(松尾諭)と妻・篠(映美くらら)の美しい夫婦愛が描かれた/南天

『豊臣兄弟!』第5話は固い絆で結ばれた、2組の夫婦が登場した。

桶狭間合戦の2年後、永禄5年(1562年)。
織田信長(小栗旬)29歳、木下藤吉郎秀吉(池松壮亮)26歳、小一郎(仲野太賀)23歳。

信長は隣国の美濃(現在の岐阜県南部)攻略の前に、自らが治める尾張国(現在の愛知県西部)の東側の隣国である三河国(愛知県東部)の大名・松平元康(のちの徳川家康/松下洸平)と同盟を組んだ。
美濃を攻める際、背後の安全を確保するためだ。

信長、秀吉、家康。戦国の三英傑、ここに集結。
だがここで、元康のクセの強い人柄が表される。
松平元康は6歳で織田家の、8歳で今川家の人質となった。そんな苦労人の元康に藤吉郎は「どうやったら偉くなれるか」と無邪気に訊ねる。それに応えて元康、

「たやすいことよ。信長殿を信じることじゃ。誰にもできぬことをやってのけるのじゃ。
恐れずに、己を信じて突き進むのじゃ」
胸を叩き「大事なのはここじゃ。熱意が人を動かし、勝敗を決する」

力強く告げる。藤吉郎は大喜びでしかと胸に刻んだが、藤吉郎・小一郎らに見送られ三河国に向け出発した後、元康と家臣の石川数正(迫田孝也)は耐えきれず笑いだす。

数正「よくもまあ……しらじらしくて思わず吹き出しそうになりましたわ」
元康「すべて逆のことを言うてやったわ!」

なんとも人の悪い男である。
すべて逆ということは、元康の考える成功の秘訣とは他の誰かがなし得たことの後を追い、用心深く、己さえ信ずることなく慎重に歩むということか。
世間一般の徳川家康のイメージ……「タヌキおやじ」を思えば、なるほどなとなる。

それはそうと「信長殿を信じることじゃ」まで逆とは。
対面時に信長は人質時代の元康を懐かしむように「久しいの、竹千代」と幼名で呼びかけたが、元康の目に信長は、一体どんな人物に映っているのだろうか。

松平元康、のちの徳川家康。戦国乱世に終止符を打つ男。
このとき、まだ21歳である。

いちいち先回りするのは誰?

明けて、永禄6年(1563年)。
舞台は尾張国清須から、同じく尾張国小牧に移っている。
桶狭間後に足軽組頭となった秀吉は順調に出世し、今は信長の馬廻衆(うままわりしゅう)だ。
もっともっと出世したいが、強力なライバルがいる。
その名は前田又左衛門利家(大東駿介)、幼名犬千代。加賀百万石の礎を築く男である。

藤吉郎が信長のために気を働かせた香の物の献上も御前試合の出場者リストも先回りされる。

信長「又左(またざ)は一度は追放したが、あれでなかなか気の回る男での」

槍の又左と称された前田又左衛門利家は、この年25歳(年齢には諸説あり)。
一時期はその勇猛さから赤母衣衆(あかほろしゅう、信長直属の精鋭部隊)の筆頭にも選ばれたが、永禄2年(1559年)に信長お気に入りの同朋衆(武将の側近く仕える僧)拾阿弥を斬り捨てたことで追放された。
桶狭間合戦とその後の森部合戦に無断で参戦し、いずれも手柄首を挙げたことで永禄4年(1561年)に帰参を許されている。

強いだけでなく、主君のご機嫌取りまで横から先回りされては自分の出番がないと秀吉はヤキモキするが、木下藤吉郎秀吉には弟・小一郎がついているのだ。

兄より先に祝言なんて…

藤吉郎・小一郎の一家団らん場面。

兄弟は、家族を尾張中村から小牧へ呼び寄せている。母・なか(坂井真紀)はもちろんのこと、姉のとも(宮澤エマ)、妹のあさひ(倉沢杏菜)。それぞれの夫、義兄の弥助(上川周作)と義弟の甚助(前原瑞樹)も一緒だ。
藤吉郎が第1話(記事はこちら)で語っていた、偉くなったら叶えたい夢の最初の一歩である「家族に腹いっぱい飯を食わせてやりたい」が叶っているのだ。

利家を凌いで、もっと出世せねばと気負う藤吉郎に、あさひは

「早く偉くなって、お寧々さま(浜辺美波)と一緒にならねば。小一郎あにさまが可哀想じゃ」

と発破をかける。兄に遠慮して想い人の直(白石聖)と夫婦にならない小一郎だが、藤吉郎は藤吉郎で、寧々に想いを伝えてすらいない。ともは

「さんざん女遊びしてきた色ボケザルのくせに」

と笑うが、母・なかは寧々に本気で惚れているからこそ簡単に行動に移せないのだと指摘する。女遊びの激しい男にありがちな、肝心なところで臆病になる弱さ。
その弱さが、ある種の色気を生むのだろう。

藤吉郎が寧々に正面から求婚するには、もっと偉くなって自信をつけねばならない。
「兄者は負けぬ。このわしが請け負う」
力強く言い切る小一郎の計略とは。

リングサイドの攻防!

信長が見物する御前試合開幕。
大河ドラマ『どうする家康』(2023年)でも見覚えある尾張コロシアム、ふたたび。
今回はちゃんとした行司がいるのと、信長という腕力と権力両面で誰も逆らえない人物が試合に参加していない分、比較的治安が良い。ちなみに『どうする家康』の織田信長役は、腕力&オーラすさまじい岡田准一だった。
小一郎は行司役の武田佐吉(村上新悟)をあらかじめ丸め込み、トーナメント戦では藤吉郎に弱い相手、利家には強い相手を当て、決勝で両者が対決するような組み合わせを仕込む。

せこい、せこすぎる。

前田利家の妻・まつ(菅井友香)は頭にハチマキ、袴姿。夫と一心同体を示す応援スタイルだ。信長は利家を「あれでなかなか気の回る奴」と褒めたが、香の物も出場者リストも、実際はまつが気配り手配りしたものではないか。
大河ドラマ『利家とまつ』(2002年)で松嶋菜々子が演じたのと同じく「私におまかせくださりませ!」タイプらしい。

利家とまつの結婚は永禄元年という。先述の利家が追放された事件はその翌年だ。
そもそも、なぜ利家は信長お気に入りの同朋衆・拾阿弥を斬ったのか。
利家の刀から笄(こうがい/髪を整えるための道具)を拾阿弥が盗んだ、その笄は妻・まつの父の形見であった……という逸話がある。
それが元で諍いとなり、利家は信長の面前で拾阿弥を斬って捨てた。
この顛末から、事件を俗に「笄斬り」と呼ぶ。

追放されて2年の浪人暮らしの間、まつは夫をガッシリと支えたのだろうなと想像させる応援の姿だ。
利家夫婦にしてみれば、織田家に戻ってみれば百姓出身の調子のよい男が信長の傍にいる。
「出世の邪魔じゃ!」となるだろう。
いよいよ決勝で直接対決となった時の声援も納得である。

まつ「旦那さま! サルは山に追い返してください!」
寧々「藤吉郎さん! そんな犬っころに負けたら承知しませんよ!」

今回の尾張コロシアム、治安は比較的良いがリングサイドの口が悪い。

美しく健気な夫婦愛

藤吉郎は利家にあっさり叩き伏せられ、小一郎の裏工作はやっぱり信長にバレてた。
ただ、藤吉郎の身のこなし、対利家戦では杖から木刀に持ち替えて体の大きな相手の懐に飛び込む作戦。パワーで利家が勝ったが、結構いい線いっていたのではないか。

裏工作もふくめて面白かったと信長は藤吉郎・小一郎兄弟を褒めたが、受け取ったのは褒美ではなくミッションだ。
美濃攻めに重要な拠点である、鵜沼城(現在の岐阜県各務原市)の主・大沢次郎左衛門(松尾諭)の調略である。寝返らせることに成功すれば、侍大将の地位が待っている。
ますます張り切る藤吉郎。

ここで固い絆に結ばれた、もう一組の夫婦が登場する。

大沢次郎左衛門と、妻の篠(映美くらら)だ。
次郎左衛門は裸一貫、一介の浪人から美濃国の戦国大名・斎藤道三(麿赤兒)に引き立てられて城持ちとなった猛将。篠は、鵜沼城の主となるまでの次郎左衛門を支えた妻として描かれる。

次郎左衛門の願いは妻を守り続けること、篠の願いは夫がいつまでも健やかであること。
こんなに互いを思いやる夫婦が、乱世に生きているとは。
戦のない穏やかな世で人生を送らせてやりたい。

調略、ひとまず成功

藤吉郎と小一郎は次郎左衛門調略の下準備として、美濃国に「大沢次郎左衛門が織田信長と秘かに通じている」という噂を流した。美濃国に潜入する役は、義兄・弥助と義弟・甚助に任せた。本来ならばこのような工作は素破(すっぱ/忍び)の仕事だが、藤吉郎にはそうした配下がいないので仕方がない。

噂作戦が功を奏して、次郎左衛門は美濃国主・斎藤龍興(たつおき/濱田龍臣)の呼び出しを受ける。
龍興は、自分の祖父・斎藤道三に忠誠を誓う次郎左衛門が気に入らない。
斎藤道三は弘治2年(1556年)、息子である斎藤義龍に討たれた。その義龍も前年・永禄4年に急死し、嫡男である龍興が14歳で美濃国主を継いだのだ。
信長が美濃攻めに動いたのは、義龍急逝後の混乱に乗じたものである。

龍興は裏切らない証として、次郎左衛門に妻・篠を人質として差し出すよう要求する。
篠は病の身だが、いや、だからこそなのか、覚悟ができている。
微笑んで「喜んで参ります」と言う篠と、苦悩する次郎左衛門。
そこに、藤吉郎と小一郎が織田の使者として訪ねてきた──。

走れ、小一郎!?

織田信長からの書状を持参した藤吉郎と小一郎。
並んだ兄弟の素襖(すおう)姿がとても良い。これからふたりが偉くなるにつれての着物の変化が楽しみだ。中身はうさんくさいが。
笑顔で次郎左衛門を誉めそやし勧誘する兄弟を見て、特殊詐欺コンビが家に来たらこんな感じなのかなと想像する。

小一郎「何かお困りのことがあるのでは?」

ますます詐欺師っぽい。先に外構を壊しておいてから壊れてますよ、修理しましょうかと訪ねてくるやつだ。

次郎左衛門の心は揺らぐ。織田に寝返れば、城と領地は約束される。
もちろん、篠の身の安全も──。
その時、家臣が噂話をばら撒く怪しい奴を捕えて連れてきた。
引き摺られてきたのは義兄・弥助、ご丁寧に噂話の指示メモを持ち歩いていたために証拠として押さえられている。藤吉郎と小一郎を目の前にして他人のフリすら出来ない。
素破ではなく侍でもないのだから、これは仕方ない。おそらく計画の意味もよく理解していないのであろう。

今の苦境はすべて、目の前にいるこいつらの策略のせい。激怒した次郎左衛門は兄弟を斬ろうとするが、藤吉郎が一気にまくしたてる。

「(弟は)お許しください! 責めはこのわしが負いまする!」
「やっぱり嫌じゃ、わしも死にとうない! わしは寧々殿と夫婦になるのじゃ」「夫婦になって、ずっと守ってゆくと決めたのじゃ!」

ずっと守ってゆくと決めた女。
藤吉郎に自分を重ね、次郎左衛門の刃が止まる。
思案し、信長はどのような男かと藤吉郎に訊ねた。藤吉郎の答えは、次郎左衛門が仕えるにふさわしい、強く大きな男。
次郎左衛門の脳裏に蘇る、斎藤道三。強く大きな男に自分は長年仕えてきて、これからも仕えたいのだ。
腹は決まった。

次郎左衛門は織田方に付く意志表示のため、小一郎に伴われて尾張国小牧に出発した。
藤吉郎は人質として鵜沼城に残る。
ところがここで問題が発生。無事に次郎左衛門は織田信長に面会したが、従者が毒を仕込んだ凶器を身に着けていたかどで、次郎左衛門を斬れと信長が家臣に命じる。

このままでは、鵜沼城に残った藤吉郎の命はない。どうする、小一郎!
大沢次郎左衛門は桶狭間合戦で戦死した(4話/記事はこちら)城戸小左衛門(加治将樹)と同じく、生没年不詳である。この先、どうなるかわからない!

次回予告。
直「私と藤吉郎さんとどっちがだいじなのよ!」小一郎、いつかこの台詞を浴びるんじゃないかと思ってました。信長の圧力。藤吉郎「小一郎は必ず来る」。藤吉郎はセリヌンティウス、小一郎はメロス。事態を打開する策はあるのか?
2月8日の放送はお休み、次回放送は2月15日です。
第6話が楽しみですね。

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NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』

公式サイト

【作】八津弘幸
【音楽】木村秀彬
【語り】安藤サクラ
【出演】仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石 聖、坂井真紀、宮澤エマ、大東駿介、松下洸平、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗 旬 ほか
【時代考証】黒田基樹、柴 裕之
【制作統括】松川博敬、堀内裕介
【プロデューサー】高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友 茜(広報)
【演出】渡邊良雄、渡辺哲也、田中 正

※このレビューは、ドラマの設定をもとに記述しています。

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主な参考文献:
谷口克弘(著)『織田信長合戦全録──桶狭間から本能寺まで』中公新書,2002年.
太田牛一(著)/中川太古(現代語訳・注)『現代語訳 信長公記』新人物文庫, 2013年.
和田裕弘(著)『織田信長の家臣団──派閥と人間関係』中公新書,2017年.
永原慶二(著)/本郷和人(解説)『戦国時代』講談社学術文庫, 2019年.
樋口隆晴(監修)『イラストでわかる武士の装束』玄光社,2021年.
黒田基樹『羽柴秀吉とその一族――秀吉の出自から秀長の家族まで』角川選書, 2025年.
柴裕之『羽柴秀長――秀吉の天下を支えた弟』角川選書, 2025年.
黒田基樹『羽柴秀長の生涯――秀吉を支えた補佐役の実像』平凡社新書, 2025年.
黒田基樹・柴裕之〔編〕『羽柴秀長文書集』東京堂出版, 2025年
『豊臣兄弟!』1話イメージイラスト/帰郷した兄・藤吉郎が弟・小一郎を織田家家臣に誘った第1話。柴田勝家に迫られ、藤吉郎が啖呵をきる/南天
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『豊臣兄弟!』2話イメージイラスト/小一郎の住む尾張国中村を悲劇が襲った第2話。しかし、それが出立の転機となる…/南天
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『豊臣兄弟!』3話イメージイラスト/小一郎(仲野太賀)による和睦の提案は織田信長(小栗旬)に「言葉が軽い」と一蹴される/南天
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『豊臣兄弟!』4話イメージイラスト/合戦を終えた織田信長(小栗旬)。兄弟もまた大きな一歩を刻む。/南天
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『豊臣兄弟!』5話イメージイラスト/鵜沼城の主・大沢次郎左衛門(松尾諭)と妻・篠(映美くらら)の美しい夫婦愛が描かれた/南天
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