暮らしに役立つ、知恵がある。

 

広告

夫と話し合いができない、母親と気が合わない──「距離が近いからこそ起きる家族の問題」を専門家に相談

拗れてしまった縁は断つべきか、自分自身が変わるべきか。心身を疲弊させる人間関係の問題を心理学者、カウンセラーの山脇由貴子さんに尋ねました。

文・長谷川未緒

夫と話し合いができない

夫と話し合いができない、母親と気が合わない──「距離が近いからこそ起きる家族の問題」を専門家に相談

夫と育児や家事の分担、お金の使い方など、話し合いたいことがあるのですが、言い方を間違えるとヘソを曲げられてしまいます。本来、夫婦は対等な関係のはず。それなのに、私ばかりがものすごくタイミングを窺い、相手がやりたいことをある程度許容することで、交渉の余地を作っています。何も言わなくても気がついてくれるはずもなく、何か言うと不機嫌になる。夫は人間関係で最も面倒臭い相手かもしれません。(40代・会社員)

話し合おうとすると夫が不機嫌になるというお悩みは、けっこう多いんです。キレるというほどではないけれど、ドアをガチャンと閉めて部屋から出て行ってしまうとか。女性は、自分の大変さを夫がちっともわかってくれていないと思っているから、口調もきつくなりがち。男性は責められていると感じてしまうのでしょう。

ただ、不機嫌になるというのは、気を許している、甘えているということでもあります。会社では、そんな態度は取らないはずです。この場合、夫に対しては、怒るのではなく、不機嫌になられたら悲しい、話し合いができないことはつらい、と自分の感情を伝えるのがいいと思います。そのうえで、自分が何に困っていて、どういうことをしてほしいのか具体的に話すのですが、相談者のコメントにもあるように、ある程度はタイミングを窺うことも大切でしょう。

夫婦のお悩み相談を受けていて感じることですが、男性は自分の疲労に対して鈍感なところがあります。体力が今どのくらい余っているのか、精神的に疲れているのかといったことに無自覚なので、なんとなく機嫌が悪いということが起きやすいんです。ですから夫の側には、もっと自分の状態に敏感になりましょうね、というアドバイスをしたりします。夫のほうで「今日は嫌なことがあって少し精神的に疲れているから、気分転換をしてから帰ろう」といったことができると、家庭の空気感が変わってきます。

妻の側からは「今日はどんな日だった?」などと聞きながら、話し合える状態かどうか確認して切り出すといいですね。「この件について話し合いたいんだけど、早く帰れる日はある?」などと、準備をしておくのもおすすめです。対等なんだから、と言ってしまうと、相手は何かを押し付けられそうと警戒心や抵抗感を抱きます。そうではなく、自分のことを理解してくれようとしているんだな、と夫に思わせることができれば、話し合いもスムーズにいくのではないでしょうか。

外出を夫が邪魔してくる

夫と保育園に通う子どもがひとりの3人家族です。家事も育児も協力的な夫ですが、私が出かけるときに快く送り出してくれません。予定をすり合わせたのに、当日になると「何時に出るの? あー、その時間はオンラインミーティングが入っちゃったわ」などと言ってきます。「でも大丈夫。子どもを見ながらできる」と言いはするのですが……。夫が3回出かけるのに対して私は1回の頻度。そのこと自体モヤついているのに、年に数回の外出日にごちゃごちゃ言ってくるのをやめてもらいたいです。(40代・自営業)

妻のことが大好きすぎて、出かけさせたくないのか、それとも母親は家にいるべきだと思っているのか、どちらかなんでしょうね。いずれにしても、男性が何か文句のようなことを言ってくるときというのは、子どもと同じで、自分に構ってほしいときなんです。コミュニケーションが足りていないんだなと捉えて、意識して夫婦の会話を増やすようにするのは、対策になると思います。

あとは、こういう邪魔は響かない、痛くも痒くもないということをわからせるために、「そうなんだ、ありがとう!」と、相手にせず出かけてしまう。モヤモヤするかもしれませんが、私のことがそんなに好きなのね、くらいに理解して。家事や育児はしているようですし、出かける前には「すごく楽しみだから、協力してもらえてうれしい」と大袈裟に感謝して、おだてておくのもいいと思います。

夫との生活が楽しくない

バイト先の飲食店で上司だった10歳年上の夫と、20代で結婚して20年。結婚前のデートはお酒も入っていたので気になりませんでしたが、シラフの夫はとても無口な人でした。最近は、必要最低限のことすらしゃべりません。私が聞き出してようやく話す程度です。以前は機嫌は悪くなかったのですが、加齢につれ「うるさいな」という態度が出るように。子どもが独立したあと、夫とふたりきりの暮らしが今から憂鬱です。(40代・看護師)

デートはお酒も入っていたし、イベントですからある程度は話していたけれど、日常になったら会話がなくなってしまったということですよね。無口な人の中には、本当に干渉されるのが苦手という人が少なくありません。「お昼は何を食べたの?」と聞かれるのも嫌だというケースがあるくらいです。特に男性は、子どもの頃からあまり話さないことが多いんですよね。子育てについて私のところに相談に来る母親も、女の子は友人関係にしても恋愛にしても何でも話すけれど、男の子は相談もせず自分で決めてしまって、何を考えているのかよくわからないと言います。男の子側からすると、母親はスポーツのことをはじめ、日常生活で男児が興味を抱くことについてよく知らないし、的外れなことを言ってくるから、話しても仕方がないと思うようです。ですから男性は基本的に、その日にあったことをこまごまと話す習慣がないということは、前提として理解しておいたほうがいいでしょう。

その上でどうするか。簡単なのは、ふたりでお酒を飲む機会を増やすことでしょうか。お酒が入れば、多少はおしゃべりするでしょうから。また、60代、70代で夫婦ふたりきりになってから悩んで来る方々には、共通の趣味を持ちましょうというアドバイスもしています。本当は早めに始めたほうがいいので、今が良いチャンスかもしれません。妻が国語の先生だったという夫婦は、自治体が運営する俳句の会に入り、ふたりで作句に取り組むようになって会話が増えたと話していました。家庭菜園がよかったという話も、よく聞きます。

いずれにしても、関係を深める努力が必要だということを相手にわかってもらう必要があります。楽しくない生活が続くことは、熟年離婚の危機にもつながります。もっと楽しい夫婦生活を送りたいと話してみることが第1段階でしょう。デートの時間を作ったり、旅行をしたり、老後に一緒にできる趣味も欲しい、と。夫婦関係に危機感を持っているということを伝えたうえで、夫に努力する意思があるかどうか。そんなこと俺にはできないというのであれば、第2段階として、ずっと一緒にいられるのかどうか、よく考えてみる必要があると思います。

母親と気が合わない

子ども時代、地方の田舎で育った私にとって、東京の大学を卒業している母は自慢の存在でした。都会的で美しく、頭の良い人だと思っていたんです。ところがここ数年、母の考えが以前ほど進歩的ではなく、保守的な発言も増えています。気づけば敬慕の念は消え、母の感情を刺激しないことだけを意識するように……。この先、どう接したらいいのでしょうか。(50代・会社員)

年老いた母親と気が合わなくなってきたという葛藤を抱かれる方は多いです。歳を取るとどんどん頑固になりますし、お互いに独立した大人同士、べったり付き合う必要はないのでは? 親には愛されたいし、愛したいという思いもあるかもしれません。親の面倒を見るのは娘という固定観念や、親孝行をしなければならないという文化もあり、距離を置くと冷たいと思われるのではないかと自分を責めてしまう人もいます。でも、50代ともなれば、母親と生き方や考え方が違ってくるのは自然なこと。わざわざきついことを言ったり、冷たくしたりする必要はないけれど、最低限の関わりにとどめるということで、罪悪感を感じる必要も、悩む必要もありません。

娘の再婚に不安がある

娘は数年前に離婚し、子どもはいません。先日、再婚すると報告がありました。喜んだのも束の間、相手は3カ月前にマッチングアプリで知り合った人だというではないですか。しかもひと回りも年下です。娘の人生だから好きにしたらいいと思うものの、不安が拭えません。(60代・パート)

マッチングアプリで結婚するケースは増えていますが、知り合って3カ月は短いのでは、そんなに年下で大丈夫なのか、などと不安を覚えるのは致し方ないこと。とはいえ、子どもはいつまでも親の言うことを聞いてはくれません。たとえ親子であっても、自立した大人同士だということは受け入れて。

親からすると、子どもが不幸になるのを見たくないのはもちろん、老後に頼られたら困るという心配もあるかもしれません。それに対しては、何かあっても助けてあげられないということは、伝える必要があるように思います。

  • 話を聞いた人

    山脇由貴子 さん (やまわき・ゆきこ)

    心理学者、カウンセラー

    都内児童相談所で心理の専門家として勤務後、独立。女性の悩み、夫婦問題、子育て相談への対応、各メディアへの出演や、執筆、講演活動等を行う。

『クロワッサン』1149号より

広告

  1. HOME
  2. くらし
  3. 夫と話し合いができない、母親と気が合わない──「距離が近いからこそ起きる家族の問題」を専門家に相談

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載