温泉ビューティ研究家・石井宏子さんが推薦する“名湯”の宿3選──いま泊まりたい、くつろぎの宿
撮影・黒川ひろみ(湯河原温泉ふきや)、西谷陽斗(著莪の里ゆめや) 文・熊坂麻美
【推薦者】石井宏子(いしい・ひろこ)さん
温泉ビューティ研究家
国内外を旅して温泉でキレイと健康を探求。多数の連載コラムを持ち、著書に『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)などがある。
石井宏子さんに聞いた、大人が心地よい宿の条件って?
適度な宿の大きさで、部屋風呂付きの客室が多いなど、静かに過ごせること──「心と体を休める旅をするには、客室数が少なめ、風呂付きの部屋が多いので大浴場が混まない、など“静かなこと”が大事。“何をしたわけじゃないけど、すごくゆっくりできた”と思える宿をおすすめしたいです」
湯河原温泉 ふきや(神奈川県・湯河原町)
7種のお風呂と洗練の空間に癒やされる
万葉集にも詠まれた古湯、湯河原温泉。閑静な町の高台に佇む〈ふきや〉は、大浴場と露天風呂、山々を望む3つの貸し切り檜風呂、足湯や岩盤浴を備え、「お風呂をとことん満喫しに」訪れる人が多い、歴史ある旅館だ。湯河原温泉は、肌の保温・保湿効果の高い塩化物泉と、肌をなめらかに整える硫酸塩泉の混合泉。ふきやでは、温度調節の加水を最小限にして、源泉の良さを生かしている。
「表面張力を感じさせるような新鮮なお湯で、大浴場の内湯に源泉を汲める湯口があるのも貴重です。タオルを源泉に浸して顔パックにしたり、湯船のふちに枕を置いて寝湯をしたり、湯めぐりをしたり。温泉をいろいろな形で楽しめます」(石井宏子さん)
アンティークの北欧家具や手織りの緞通(だんつう)を設えた数寄屋造りの客室も、ふきやならでは。感性を刺激する空間で、旅情に浸りたい。
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上398 TEL:0465-62-1000 1泊1名4万2900円〜(2名1室利用時、夕朝食付き)。https://www.yugawarafukiya.com/ 昭和10年創業、今年90周年。傷病兵の療養地でもあった湯河原温泉は、傷の治りがよいことでも知られる。
著莪(しゃが)の里 ゆめや(新潟県・新潟市)
体の中から肌を潤す、自家源泉
北国街道の湯治場として栄えた岩室温泉街の小さな宿。「女性ひとりでも過ごしやすい宿を」との思いから、昭和63年に開業された。ここ〈ゆめや〉と、姉妹宿である〈富士屋〉でのみ体験できる自家源泉「上の郷おんせん」が魅力。
「“含硫黄-ナトリウム-塩化物泉”の湯で、弱アルカリ性のやわらかな肌触り。硫黄の血行促進作用で体の芯までポカポカになり、肌代謝や体内の循環が促され、お肌の調子が内側から整います」(石井さん)
温泉のよさを底上げするのは、越後の味覚と自然体のもてなし。
「女将さんたちがほどよい距離で接してくれるので、気負わずリラックスできます。料理も絶品。お湯、味覚、おもてなしの三位一体の相乗効果で癒やされてほしいです」
新潟市西蒲区岩室温泉905-1 TEL:0256-82-5151 1泊1名3万4100円〜(2名1室利用時、夕朝食付き)。https://www.i-yumeya.com/ 手入れの行き届いた庭園に囲まれ、鳥のさえずりも癒やしに。4〜5月は著莪の花がアプローチを彩る。
おとぎの宿 米屋(よねや)(福島県・須賀川市)
源泉の“美容液”で体を包んで温める
田園や森が広がるのどかな丘陵地に立つ〈おとぎの宿 米屋〉。豊かな湯量を誇る自家源泉は「美肌の湯」として名高い。大浴場と露天風呂のほか、すべての客室が温泉付き。こんこんと湧く源泉を贅沢にかけ流している。
「とろんとろんのお湯は、まるで美容液のよう! 泉質はアルカリ性単純温泉で、肌の汚れや古い角質をやさしく落として、すべすべの肌になります」(石井さん)
大浴場の「小湯」は、湯船の底から源泉が注がれるため、湯の鮮度が際立つ。頭から全身に源泉を浴びられるミストサウナもある。
「美容効果の高いお湯をたっぷり味わった後は、体にも心にもやさしいビオ食材中心の料理で、のんびり養生してください」
福島県須賀川市岩渕字笠木168-2 TEL:0248-62-7200 1泊1名3万1900円〜(2名1室利用時、夕朝食付き)。https://e-yoneya.com/ 客室は本館「おとぎの丘」が11室、スタイリッシュな別館「離れ88」(上写真)は6室ある。足湯や飲泉も楽しめる。
『クロワッサン』1148号より
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