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「終活期」に必要なお金──女の人生、最後は1人。お金をどう守り、どう使うか【女の人生、いくら必要?】

子育て、介護、年金……。女の人生、後半にもまだまだお金がかかる!「老後資金」で一括りにできない、これから必要なお金について、じっくり考えましょう。今回は「終活期」。

イラストレーション・霜田あゆ美 文・黒澤 彩

子育て、介護、年金……。女の人生、いくら必要?

「終活期」に必要なお金──女の人生、最後は1人。お金をどう守り、どう使うか【女の人生、いくら必要?】

「人生を四季に例えるなら、アラフィフ以降は秋にあたる時期。冬を迎えるまで、まだだいぶ時間があります。やりたいことを考えたり、稼ぐ力をつけたり、自分の力で人生後半を生きていくイメージをしておきたいですね」

と話すのは、社会保険労務士の資格を持つ、ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。とくに女性は平均寿命が延びていることもあり、人生の終盤に向けて、家計や暮らしの変化に備える必要があるといいます。

夫が先立つと収入半減!? おひとりさま期に備えよ!

「女の後半生というテーマで、もっとも重要なターニングポイントはここです」と井戸さん。

夫婦の場合、平均寿命からすると夫が先に亡くなる可能性のほうが高いといえるだろう。夫が亡くなって何が困るかというと、年金収入が半減することだ。遺族厚生年金として、夫の老齢厚生年金の4分の3が妻の老齢基礎年金に上乗せされるとはいえ、2人分の年金と比べるとだいぶ減ることに。

「人によって住宅ローンや教育費が何歳までかかるかも違いますが、年金生活になってからも、夫と2人分の年金が入ってくるうちは生活費の大半をカバーできるのではないでしょうか。やがて70代後半にもなれば交際費、旅行費などの支出も減ってくるでしょう。それが、自分1人の年金だけになると一変します。食費こそいくらか減るかもしれませんが、住宅関連の固定費や光熱費などをすべて1人で負担することになるのは、思いのほか大変です」

80代だとすると自分自身の体も衰えてくるだろう。そんなときに、経済的に困窮するのはつらい。

「ここで改めて、節約というか生活費の見直しが必要になります。足りない分を働いて補うことができないので、支出を抑え、生活を小さくしていきます。気をつけてほしいのは、手持ちの資産を増やそうと投資などを始めないこと。初心者が高齢になってから始めるなんて危険でしかありません。保険も同じです。不安に駆られて、下手にお金を動かさないようにしましょう」


遺族年金が改正されてもほとんど影響ありません!

2028年からの遺族年金制度改正のポイントは、子どものいない配偶者への支給の見直し。現行では女性にだけ支給されているが、改正後は、子どものいない40歳未満の夫婦の場合、男女ともに5年間の有期給付になる。男性も受給できるようになり、給付額が増額され、収入要件も緩和される。対象年齢は20年ほどかけて段階的に引き上げられるが、60歳以上で死別した場合は現行どおりのため、現在40歳以上の人には影響がない。

人生の残り時間から逆算、医療・介護費を手元に

春夏秋冬でいうと、いよいよ冬にあたるのが、この時期。ここから必要になるお金はどのくらいなのか、統計から見てみよう。

「元気に動けなくなってくれば、生活費はそれほどかかりません。基本的には年金で暮らせているとして、貯蓄として必要なのは医療、介護のためのお金でしょう。両方を合わせた平均が935万円というデータがあります。介護に関しては、贅沢な施設に入るなどお金をかけようと思えばいくらでもかけられるので、実際にはそんなに必要ないのかもしれませんが、目安として1000万円の貯蓄があれば安心できます」

人生の残り時間から逆算すると、1000万円を超える資産があっても、おそらく使いきれないとわかる。お金はお墓に持って入れないので、気持ちのいい使い方、お金の始末についても考えておくといいそう。

「子どもがいれば、資産をより多く残してあげたいと思うかもしれませんが、今の時代は“ゼロで死ぬ”のが理想ともいわれます。お金を残すことばかり考えず、自分にとって価値のあることに惜しみなく使ったほうがいいという考え。子どもに残すにしても、死後に相続させるよりも、子どもができるだけ若いうちに援助をしたほうが有意義です。もし自分の子どもがお金のかかる子育て世代だとしたら、住宅費や孫の教育費など、税金がかからない方法で生前贈与するのも一案です」

相続させる子どもがいない場合、取り越し苦労かもしれないが、残ったお金をどうすれば?

「寄付も含めて検討してみてはいかがでしょう? 国際機関や認定NPO法人など、活動内容や信用度を調べて、支援したいと思える寄付先をリストアップしてみては。同時に、銀行や証券の口座を整理し、必要なら司法書士、税理士などプロの手も借りながら、お金の終活を始めましょう。終活はしなくてはならないものではなくて、自分の心を軽くするためのもの。そう考えれば楽しく進められるのではないでしょうか」


老後のキャッシュフローを書き出してみよう!

1000万円でいいのか、はたまた3000万円か? 老後に必要な貯蓄額を知るには、具体的な自分の収支を書き出して可視化するしかない。キャッシュフロー表を作ってみよう。年金や仕事の収入、生活費の支出、想定できる臨時支出を1年単位で書き出して収支を計算する。赤字額が多ければ、それだけ貯蓄がたくさん必要ということで、目標とする貯蓄額がわかる。貯められそうもない額であれば生活費を見直し、できるだけ長く働こう。

  • 井戸美枝

    井戸美枝 さん (いど・みえ)

    ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)

    社会保険労務士。年金や社会保障にも詳しい。近著に『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(講談社)などがある。

『クロワッサン』1146号より

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