「セカンドキャリア期」に必要なお金──避けて通れない親の介護を含め、今後のお金と向き合う時期【女の人生、いくら必要?】
イラストレーション・霜田あゆ美 文・黒澤 彩
子育て、介護、年金……。女の人生、いくら必要?
「人生を四季に例えるなら、アラフィフ以降は秋にあたる時期。冬を迎えるまで、まだだいぶ時間があります。やりたいことを考えたり、稼ぐ力をつけたり、自分の力で人生後半を生きていくイメージをしておきたいですね」
と話すのは、社会保険労務士の資格を持つ、ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。とくに女性は平均寿命が延びていることもあり、人生の終盤に向けて、家計や暮らしの変化に備える必要があるといいます。
住み替え? リフォーム? 動けるうちに決断を
できれば50代のうちに方針を決めておきたいのが、老後の住まいについて。
「今住んでいる家の住宅ローンが10年以上残っている場合は、繰り上げ返済を検討してもいいのではないでしょうか。退職金を一括完済に充てると、老後のお金が不足してしまう恐れがあるので、収入があるうちに計画的に繰り上げ返済をし、退職後にはローンが残らないようにしておくというのが理想です」
新たにリフォームローンを組む人も多いが、リフォームを決断する前に、老後の住まい方を想像してみてほしいと井戸さん。
「ローンを組んでまでリフォームをした家に、あと何年住み続けるのか、考えてみてください。10年ちょっとしか住まないのだとしたら費用対効果が小さいのでは? ファミリーサイズの家を売却して小さな家に住み替えるのも選択肢です。大きな家ほど光熱費が高く、住んでいるだけでランニングコストが多めにかかることも頭に入れておきましょう」
実は、高齢期においてもっとも大きなお金が動くのが住宅関連。ローンの金利やリフォーム費用も上昇傾向にあることに注意し、10年といわず、20〜30年先の生活を見通して慎重に判断しよう。
60代以降も働く意味は、収入だけにあらず!
「会社員なら65歳まで再雇用で働くことができます。でも、長く勤めてきた女性の場合、同じ会社で65歳まで働きたいと考える人は少ないようです。お給料はだいぶ下がってしまいますし」
60歳までがんばったのに、まだ働かなきゃいけないの? と辟易してしまう人もいるはず。ただ、リタイアしたとして、その後何をするのかを考えてみよう。
「はっきり言えば、暇ですよね。そして孤独になりやすいです。老後の孤独対策にいちばんいいのは、働くことだと思います」
習い事や趣味を始めるのももちろんいいけれど、それだとお金がかかるばかり。年金受給まで少なくともまだ5年あるという現実を踏まえると、60歳以降も毎日ではなくても仕事をして、少しの収入を得ていくのがこれからの王道といえそう。
「50代のうちに、自分が好きなことや今までのスキルを活かしてできそうなことは何かな? と考えてみましょう。たくさん稼がなくてもいいので、楽しく、無理なく続けられる仕事を見つけるのが、セカンドキャリアの最大のポイントです」
ずっと、ちょっと、お金をもらえる。そんな働き方が理想的。定年はゴールではなく、シフトチェンジのタイミングと捉えたい。
「ちなみに、年金を繰り上げ受給するのはおすすめしません。少ない年金額が一生続くので」
女性の負担が大きい介護。費用は親のお金で賄う
早い人は40代、多くの人が50代のうちに直面することになるであろう親の介護。お金の心配も決して小さくない。
「統計をみると、親子ともに施設に入らず、できるだけ居宅介護でがんばりたいと考える人が多いようですが、無理は禁物です。親の資産の範囲内で、利用できるサービスや施設を検討しましょう」
往々にして、兄弟がいても女性のほうにあらゆる手続きや日常的な用事がなだれ込んでくるもの。その覚悟をしたうえで、お金の面では、親が要介護になる前からコミュニケーションをまめにとり、年金額、資産額を把握しておくことがもっとも大切だという。
「預貯金だけではなく、入っている保険なども聞いておきましょう。保険は自分で請求しなければお金が下りないので、その存在を知らないでいると給付をもらい損ねてしまいます」
認知症でお金を引き出せなくなる事態に備えるなら、金融機関ごとに代理人指定をしておくといい。後見人などお金がかかる面倒な制度を利用しなくてもすむように、できる手は打っておきたい。また、働いている人は、介護離職を絶対にしないように。ひとりで抱えず、チームで行う意識を持っておこう。
介護費用は500万円超。長引くことも想定を
介護費用の平均は月々約8万円で期間の平均は5年。全部で500万円ほどとされるが、いつまで続くかわからないのが問題。親の年金で赤字にならない負担額が、利用できるサービスの目安になる。
認知症に備えてお金の管理を支援するサービスには、①金融機関での「代理人の事前指定」、②社会福祉協議会による「日常生活自立支援事業」、③専門家を介して手続きする「家族信託」、④裁判所に申請する「成年後見制度」がある。
『クロワッサン』1146号より
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