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『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』山本高樹 文・写真──レンズ越しに追った、雪山にいた双子の雪豹

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』 山本高樹 文・写真 雷鳥社 2,420円
『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』 山本高樹 文・写真 雷鳥社 2,420円

雪豹はヒマラヤ山脈、アルタイ山脈をはじめ主に山岳地帯に生息する。絶滅危惧種に指定されて“幻の獣”と呼ばれているという。そんな雪豹を撮影すべく、インド北部のチベット文化圏、スピティへと向かった旅の記録だ。極寒の中、著者とその仲間は母親を亡くした双子の雪豹を追う。写真もたっぷり掲載され、現地の様子が伝わってくるのがありがたい。山と渓谷に囲まれた広大な土地の一か所だけに四角い家が立ち並ぶ様子、岩肌がのぞく雪山の光景に圧倒される。そこに雪豹やアイベックス(立派な角を持つヤギ属の動物)、狼、キツネなどが現れるわけだが、彼らの狩りの様子は、命の厳しさとたくましさを実感させる。

一方、街並みや人々の服装はカラフルで、自然の色彩との対比が鮮烈。彼らの暮らしぶりやさまざまな催しも丁寧に描かれ、村の人々がみな気さくで親切なのが印象的。さまざまな料理も出てくるが、厳しい冬場の温かいチャイが、読み手の五臓六腑にも沁みてくる。

自分がなかなか行くことのできない土地を旅し、なかなかできない体験をたっぷり味わった。スピティをもっと知りたくて検索したら、いくつかツアーが出てきてびっくり。行ってみたい……!

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1145号より

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