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互いに刺激しあったアーティスト・カップル——『ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ』アーティゾン美術館

文・青野尚子

20世紀初頭に活動したアーティスト・カップル、ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ。夫婦だった2人のクリエイションと関係性にスポットをあてた展覧会が開かれる。

ゾフィー・トイバー=アルプは1889年スイス生まれ、ジャン・アルプは1886年ドイツ生まれ。1915年、グループ展に参加したことをきっかけに知り合い、1922年に結婚する。

二人はそれぞれの創作活動だけでなく、コラボレーションによる作品も制作している。1943年にゾフィーが逝去してからも彼女が残したものはジャンにインスピレーションを与えていた。

ゾフィーは幾何学的抽象や色彩理論の研究を基盤にテキスタイル、家具デザイン、建築設計、絵画などを手がけた。当時、女性にはテキスタイルなどの応用芸術が向いていると考えられていたが、後に前衛芸術の最前線で男性と肩を並べるまでになる。

ジャン・アルプ(ゾフィー・トイバー=アルプの作品に基づく)「無題」1950年頃、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト  (C) VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772
ジャン・アルプ(ゾフィー・トイバー=アルプの作品に基づく)「無題」1950年頃、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト (C) VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772

ジャン・アルプは有機的なフォルムの彫刻作品で知られるが、もともとは絵画や詩を手がけていた。が、平面に油彩で描く絵ではなく、レリーフや偶然的に見出されるイメージやコラージュなど、伝統的な表現にとらわれない創作活動を展開していく。

ジャンに比べると日本ではゾフィーの仕事が紹介される機会が少なかった。女性アーティストがまだまだ珍しい存在だった20世紀前半、互いに輝いた二人の軌跡が浮かび上がる。

ジャン・アルプ「花の頭部をもつトルソ」1924年、アルプ財団、クラマール (C) VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772
ジャン・アルプ「花の頭部をもつトルソ」1924年、アルプ財団、クラマール (C) VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772
『硲(はざま)伊之助展』とシスレーなど『石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト』を同時開催。
 
『ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ』
3月1日(土)~6月1日(日)
 
アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1・7・2)
TEL.050・5541・8600(ハローダイヤル)10時〜18時(金曜は〜20時)
月曜、5月7日休(5月5日は開館) 
入館料ウェブ予約一般1,800円、窓口販売一般2,000円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1136号より

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