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福を呼び、厄を除ける縁起物ーーその魅力

私たちの暮らしにあふれている、幸せを呼び込むモノやコトの数々。心豊かに、前向きに過ごすために、それらをあらためて探してみては?

撮影・青木和義 イラストレーション・上大岡トメ 文・嶌 陽子 構成・中條裕子

3つの宗教の御朱印を集められる御朱印帳も

上大岡 先生は個人的に縁起物を集めてはいないんですか?

平藤 今は特に集めていないですね。ただ、大学生の時にお寺の御朱印を集めたことがあります。大学の先輩に、御朱印帳がいっぱいになったらそれ自体がお守りになると教えてもらったんです。最近は神社の御朱印が流行っていて、集めている人も多いですが、20年以上前は御朱印といえばお寺でいただくものだったんですよ。日本各地のお寺でいただいた御朱印が、初めて意識して集めた縁起物です。

上大岡 東北から関西まで、いろんなお寺の御朱印を集めたんですね。デザインも本当にさまざま。

平藤 ちなみに、ちょっと珍しい御朱印帳も持っているんですよ。天草地方の﨑津(さきつ)のもの。神社、お寺、教会と、3つの宗教の御朱印をいただけるんです。

上大岡 本当だ。ひとつの御朱印には教会って書いてありますね。

平藤 﨑津は隠れキリシタンの人々が住んでいた土地でもあります。それもあって、仏教と神道、教会が共存していたんですよね。そうした地域色のある御朱印も興味深いです。

上大岡 どんな宗教にも縁起物という考え方はあるんですね。

平藤 縁起という言葉自体は、そもそもは社寺の由来や起源を指すものでした。そこから拡大して、私たちが今使っているのは「よいことが始まっていく」という意味なのかと。だから「縁起物」も、それを持つことでよいことがもたらされる、ということだと思います。それは、国や地域の文化で規定されている場合もあれば、個人の解釈による場合もある。

上大岡 そうそう、個人的な縁起物ってありますよね。私は小学生の時、大好きなアメリカのロックバンドがいたんですが、雑誌から切り抜いた彼らの写真をパスケースに入れて持ち歩いていたんです。学校にも持って行って、忘れると取りに帰るくらい。好きっていう以上に、自分にパワーをくれる存在でした。「これがあれば大丈夫!」みたいなものだったんです。

平藤 自ら作ったり見つけたりして、自分だけの縁起物っていうのができていくのもおもしろいですよね。

食や行事、風習など、日常の中に自然と溶け込んでいるんですよね。
食や行事、風習など、日常の中に自然と溶け込んでいるんですよね。

上大岡 先生にはそういう縁起物はないんですか?

平藤 私は研究者ということもあって、自分が持っていて運気が上がるかどうかということより、なぜこれが縁起物になったのかということに興味があるんです。やっぱり神話がベースになっているものに惹かれます。たとえば、風土記の中に蘇民将来(そみんしょうらい)の話というのがあります。とある兄弟のところに神様がやってきて宿を求めたところ、富裕な弟は断るんですが、貧窮な兄は快く歓待をした。この兄の名前が蘇民将来なんです。その後、神様が疫病をもたらした際に「蘇民将来の子孫」と言えば難を免れた。

上大岡 その神話を元にしたのが「蘇民将来子孫也」と書かれた厄除けのお守りですね。

平藤 神話というのはものすごく古い時代のもので、今とは関係ないと思われがちですが、こうした縁起物を通じて現代にもしっかり息づいているのがとても興味深いなと思います。

はるか昔の神話の世界も、縁起物を通じて現代に息づいています。
はるか昔の神話の世界も、縁起物を通じて現代に息づいています。

上大岡 日頃はそれほど意識していなくても、初詣や招き猫、おせち料理や七草粥なんかの行事食とか、縁起物は私たちの生活にしっかり溶け込んでいますよね。「茶柱が立った」なんていうのもそうですし。

平藤 今回は社寺の授与品を中心にお話ししましたが、それ以外にも古くから縁起物として認められてきたもの、さらには自分たちで発見できる縁起物もある。自分たちでいかようにもカスタマイズできるというのが、縁起物の自由なところだと思います。

上大岡 ローカルな縁起物が全国区になったり、元は一緒だけれど地域ごとに変化していったり。そういう各地の縁起物を見つけると、旅の楽しみも広がります。そこで見つけた縁起物を周りの人に贈って「おふくわけ」するのも楽しい。これからもいろんな「ふくもの」に出合っていきたいです。

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