片岡仁左衛門さん「現代のお客様の心にも響く“人間”の心を演じる」【今会いたい男】
片岡仁左衛門さんが泉鏡花の『婦系図(おんなけいず)』で抒情的な男女の機微を演じます。
撮影・小笠原真紀 スタイリング・DAN ヘア&メイク・林 摩規子 文・木俣 冬
現代のお客様の心にも響く “人間”の心を演じる
歌舞伎界のレジェンドにして人間国宝の片岡仁左衛門さん。1949年に『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』で初舞台を踏んでから75年、端正な顔立ちと胸に迫る熱情、どんな役にも滲む品格は、唯一無二である。
仁左衛門さんにとって、魅力的な役とはどういうものでしょうか。
「悪役でも二枚目、三枚目でもお客様の心を打つことができる役ですね」
仁左衛門さんが演じるからこそどんな役でも心に響くと思うのだ。
「そう言っていただければ役者冥利に尽きます。古典の骨格を守りながら、意味のわかりにくいセリフはわかりやすいように直したり、ストーリーの上でさほど必要のないセリフはカットしたり、場合によっては前後を入れ替えたりしてとにかくお客様の心が物語についていきやすくして、芝居を観ているというよりは、その場に居合わせているような感覚になっていただければ、と思っています。型を守るだけではなく、古典の味を崩さずその時代に合った型を生み出すことも大切だと思います。そして、その時代に生きる“人間”を演じることを大事にしています」
「錦秋十月大歌舞伎」夜の部『婦系図』では、師匠と愛する女性・お蔦の間で揺れ動く語学者・早瀬主税(ちから)を演じている。
『クロワッサン』1126号より
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