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青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。

「古津軽」の物語と出合う旅に出かけてみませんか。

撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・黒澤 彩

かご、漆器、木工品、今も残る工芸の技を学びに。

津軽地方には、こぎん刺しのほかにも風土に根ざした手仕事、工芸の技術がさまざまに残る。りんご農家で収穫のときに用いていたりんごかごを編む職人さんがいると聞いて、弘前市愛宕地区へ。

冬を越しに渡ってきた白鳥たちが水田で羽を休めているのどかな田園地帯は、かつて「竹細工の里」と呼ばれ、100軒以上の作り手がいたという。プラスチックかごの普及や職人の高齢化で需要も供給も減っていき、現在はわずかに2軒が残るのみ。そのうちの一人、三上司さんは今日も作業小屋で、根曲(ねまがり)竹のかごを黙々と編み続けている。

年齢を聞くと「寅年だ」と三上さん。御年86歳。
年齢を聞くと「寅年だ」と三上さん。御年86歳。

「昔はお寺の坊さん以外、みんなが編んでたよ」と、これは定番ジョークかもしれないし、本当かもしれない。

材料になる根曲竹は岩木山麓など県内で採れるもので、水に強く、軽くて丈夫なのが特長。今は美しい竹細工として人気が高く、遠方からの問い合わせが多いのだそう。三上さんも、りんごかごより小さめのサイズをよく作るようになった。食器を収納したり野菜を入れたりといろいろな使い方ができそうだ。

【竹細工の里の、素朴なりんごかご。】かつての暮らしの道具も、現在は津軽を代表する工芸品。東京のセレクトショップなどでも扱われている。
【竹細工の里の、素朴なりんごかご。】かつての暮らしの道具も、現在は津軽を代表する工芸品。東京のセレクトショップなどでも扱われている。

編みたては青さの残る竹の色が、使ううちに茶色く経年変化してつやが出てくるというから、長く大切に使いたい。あとは、願わくば、三上さんの後継者が現れますように。

1点ずつ、竹の長さを揃えてカットするところから始めて一気に完成させる。流れるような手捌き。
1点ずつ、竹の長さを揃えてカットするところから始めて一気に完成させる。流れるような手捌き。

津軽塗

研ぎ出しの技法から生まれる美。

300年以上の歴史があるという津軽塗も、この地方を代表する工芸だ。何度も重ね塗った漆の層を研ぎ出して模様を作る「研ぎ出し変わり塗り」はとても手間のかかる技法で、知るほどに惹かれる。今年リニューアルしたばかりの弘前市内のギャラリーショップ『CASAICO』では、技法についての展示や江戸時代の再現模様などを見ることができる。

青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。
青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。

●gallery CASAICO
青森県弘前市城東中央4・2・11 
TEL.0172・88・7574 
営業時間:10時~17時 ※営業日はHPで確認。
https://casaico.com/

ブナコ

ブナ材を活用したモダンなインテリア。

戦後に誕生したモダンな工芸品。「ブナコ」は、青森に多いブナの木を生かしたプロダクト。薄いテープ状にしたブナ材を巻いて成形する独特の方法で、器や照明などさまざまなものを作り出す。どれも有機的な曲線のデザインと木の温もりが調和して、現代の生活に合わせやすい。ファッションブランドやデザイナーとのコラボ商品も多数。

青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。
青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。

●BUNACO Show Room BLESS
青森県弘前市土手町100・1 もりやビル2F 
TEL.0172・39・2040 
営業時間:10時30分~18時 不定休

表情豊かな「鳥居の鬼コ」に会いにいく。

月夜見神社

弘前市中崎。ヒゲをたくわえたタイプの鬼コ。ふんどし着用。
弘前市中崎。ヒゲをたくわえたタイプの鬼コ。ふんどし着用。

熊野宮

弘前市種市。口をへの字に結んでいる。現在の鬼コは2代目。
弘前市種市。口をへの字に結んでいる。現在の鬼コは2代目。

三社神社

平川市日沼高田。異彩を放つ青鬼コ。村の大工さんが制作した。
平川市日沼高田。異彩を放つ青鬼コ。村の大工さんが制作した。

神明宮

弘前市富栄。いつ頃から鳥居に上げられているのかは不明。
弘前市富栄。いつ頃から鳥居に上げられているのかは不明。

八幡宮

平川市柏木町。シンプルな石造り。1900年の作とみられる。
平川市柏木町。シンプルな石造り。1900年の作とみられる。

八幡宮

弘前市石川。2代目だが制作年は不明。中腰スタイル。
弘前市石川。2代目だが制作年は不明。中腰スタイル。

日吉神社

弘前市三和。鳥居を建て替えた際に外され、現在は社殿内に。
弘前市三和。鳥居を建て替えた際に外され、現在は社殿内に。

白山姫神社

弘前市鳥井野。やや痩せ型で白いパンツが大きそうに見える。
弘前市鳥井野。やや痩せ型で白いパンツが大きそうに見える。

八幡宮

弘前市撫牛子(ないじょうし)。1919年作の2代目は、ゴジラ風のルックス。
弘前市撫牛子(ないじょうし)。1919年作の2代目は、ゴジラ風のルックス。

津軽地方、主に弘前市と五所川原市に今も残るという鬼信仰。その象徴が、神社の鳥居に上げられ、島木をよいしょっと肩で支えている「鳥居の鬼コ」だ。

いつ、どんな理由で鬼コが据えられたのかは不明とする神社が多いものの、やはり厄除け、魔除けの意味合いが強いという。鬼コたちは個性豊かで色もお顔も体形も実にさまざま。

県では「古津軽の鳥居の鬼コカード」も作られるなどファンが急増中なのだそう。どこか愛嬌のある鬼コたちに会いに、神社巡りを楽しんでみては。

撫牛子八幡宮の鳥居全景。小学生が描いた鬼コの絵が掲示されるなど、地元で愛されているのがわかる。
撫牛子八幡宮の鳥居全景。小学生が描いた鬼コの絵が掲示されるなど、地元で愛されているのがわかる。

ローカルな市民の台所、駅前市場で食べ歩き&お買い物。

青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。

お惣菜、海産物、野菜などなんでも揃う弘前駅前の「虹のマート」。

左・津軽そば、筋子とひきわり納豆の寿司を買ってランチ。 右・通路の両サイドにいろいろな店が。ぐるぐる迷うのも楽しい。
左・津軽そば、筋子とひきわり納豆の寿司を買ってランチ。 右・通路の両サイドにいろいろな店が。ぐるぐる迷うのも楽しい。

朝は飲食店を営む人たちの仕入れで賑わい、昼には近くで働く人が昼ごはんを買いにきたりと、一日中お客さんが絶えない活気ある市場だ。

左・鮮魚店『おのき』の店主夫婦。「トゲクリガニがおいしいよ」 右・たたいたイカゲソと野菜を揚げた「いがめんち」は必食。
左・鮮魚店『おのき』の店主夫婦。「トゲクリガニがおいしいよ」 右・たたいたイカゲソと野菜を揚げた「いがめんち」は必食。

地元の人は「津軽のおいしいものを見つけるならここ」と太鼓判を押す。

左・飯ずしは、ホッケ、ニシン、ハタハタなど数種あり。 右・お店の人と話をしながら買えるのは市場の醍醐味。
左・飯ずしは、ホッケ、ニシン、ハタハタなど数種あり。 右・お店の人と話をしながら買えるのは市場の醍醐味。

市場で買ったものはすべて休憩所のテーブル席で食べられるので、津軽そばとお寿司と焼き魚なんて組み合わせもOK。元気なおかあさんたちとの会話が楽しい!

虹のマート

青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。

地元で愛される、憩いの市場。

1956年創業。以前は「弘前食品市場」の名で親しまれていた。海産物の専門店をはじめ、ローカルフードや惣菜店もよりどりみどり。津軽そば店、ラーメン店もあり、食べるものを一つに絞るのは至難の業。毎日通いたくなる。

●青森県弘前市駅前町12・1 
TL.0172・32・6411 
営業時間:8時~18時 日曜休

アップルパイ巡りも楽しい!

りんごの街・弘前市にはアップルパイが食べられるベーカリーや喫茶店が多くあり、ガイドマップが発行されているほど。

弘前れんが倉庫美術館『CAFE & RESTAURANT BRICK』のひと皿は市内のイタリアンレストラン監修。
弘前れんが倉庫美術館『CAFE & RESTAURANT BRICK』のひと皿は市内のイタリアンレストラン監修。

それぞれに個性があり、りんごの品種やパイの形状などバリエーションは驚くほど豊富。酸味、甘味の違いなどを食べ比べてみよう。

酸味と甘味のバランスがいい「タムラファーム」のアップルパイ。弘前市りんご公園の喫茶コーナーにて。
酸味と甘味のバランスがいい「タムラファーム」のアップルパイ。弘前市りんご公園の喫茶コーナーにて。

『クロワッサン』1116号より

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