青森・津軽の旅で見逃せない、工芸、鳥居の鬼コ、市場のおいしいもの。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・黒澤 彩
かご、漆器、木工品、今も残る工芸の技を学びに。
津軽地方には、こぎん刺しのほかにも風土に根ざした手仕事、工芸の技術がさまざまに残る。りんご農家で収穫のときに用いていたりんごかごを編む職人さんがいると聞いて、弘前市愛宕地区へ。
冬を越しに渡ってきた白鳥たちが水田で羽を休めているのどかな田園地帯は、かつて「竹細工の里」と呼ばれ、100軒以上の作り手がいたという。プラスチックかごの普及や職人の高齢化で需要も供給も減っていき、現在はわずかに2軒が残るのみ。そのうちの一人、三上司さんは今日も作業小屋で、根曲(ねまがり)竹のかごを黙々と編み続けている。
「昔はお寺の坊さん以外、みんなが編んでたよ」と、これは定番ジョークかもしれないし、本当かもしれない。
材料になる根曲竹は岩木山麓など県内で採れるもので、水に強く、軽くて丈夫なのが特長。今は美しい竹細工として人気が高く、遠方からの問い合わせが多いのだそう。三上さんも、りんごかごより小さめのサイズをよく作るようになった。食器を収納したり野菜を入れたりといろいろな使い方ができそうだ。
編みたては青さの残る竹の色が、使ううちに茶色く経年変化してつやが出てくるというから、長く大切に使いたい。あとは、願わくば、三上さんの後継者が現れますように。
津軽塗
研ぎ出しの技法から生まれる美。
300年以上の歴史があるという津軽塗も、この地方を代表する工芸だ。何度も重ね塗った漆の層を研ぎ出して模様を作る「研ぎ出し変わり塗り」はとても手間のかかる技法で、知るほどに惹かれる。今年リニューアルしたばかりの弘前市内のギャラリーショップ『CASAICO』では、技法についての展示や江戸時代の再現模様などを見ることができる。
●gallery CASAICO
青森県弘前市城東中央4・2・11
TEL.0172・88・7574
営業時間:10時~17時 ※営業日はHPで確認。
https://casaico.com/
ブナコ
ブナ材を活用したモダンなインテリア。
戦後に誕生したモダンな工芸品。「ブナコ」は、青森に多いブナの木を生かしたプロダクト。薄いテープ状にしたブナ材を巻いて成形する独特の方法で、器や照明などさまざまなものを作り出す。どれも有機的な曲線のデザインと木の温もりが調和して、現代の生活に合わせやすい。ファッションブランドやデザイナーとのコラボ商品も多数。
●BUNACO Show Room BLESS
青森県弘前市土手町100・1 もりやビル2F
TEL.0172・39・2040
営業時間:10時30分~18時 不定休
表情豊かな「鳥居の鬼コ」に会いにいく。
月夜見神社
熊野宮
三社神社
神明宮
八幡宮
八幡宮
日吉神社
白山姫神社
八幡宮
津軽地方、主に弘前市と五所川原市に今も残るという鬼信仰。その象徴が、神社の鳥居に上げられ、島木をよいしょっと肩で支えている「鳥居の鬼コ」だ。
いつ、どんな理由で鬼コが据えられたのかは不明とする神社が多いものの、やはり厄除け、魔除けの意味合いが強いという。鬼コたちは個性豊かで色もお顔も体形も実にさまざま。
県では「古津軽の鳥居の鬼コカード」も作られるなどファンが急増中なのだそう。どこか愛嬌のある鬼コたちに会いに、神社巡りを楽しんでみては。
ローカルな市民の台所、駅前市場で食べ歩き&お買い物。
お惣菜、海産物、野菜などなんでも揃う弘前駅前の「虹のマート」。
朝は飲食店を営む人たちの仕入れで賑わい、昼には近くで働く人が昼ごはんを買いにきたりと、一日中お客さんが絶えない活気ある市場だ。
地元の人は「津軽のおいしいものを見つけるならここ」と太鼓判を押す。
市場で買ったものはすべて休憩所のテーブル席で食べられるので、津軽そばとお寿司と焼き魚なんて組み合わせもOK。元気なおかあさんたちとの会話が楽しい!
虹のマート
地元で愛される、憩いの市場。
1956年創業。以前は「弘前食品市場」の名で親しまれていた。海産物の専門店をはじめ、ローカルフードや惣菜店もよりどりみどり。津軽そば店、ラーメン店もあり、食べるものを一つに絞るのは至難の業。毎日通いたくなる。
●青森県弘前市駅前町12・1
TL.0172・32・6411
営業時間:8時~18時 日曜休
アップルパイ巡りも楽しい!
りんごの街・弘前市にはアップルパイが食べられるベーカリーや喫茶店が多くあり、ガイドマップが発行されているほど。
それぞれに個性があり、りんごの品種やパイの形状などバリエーションは驚くほど豊富。酸味、甘味の違いなどを食べ比べてみよう。
『クロワッサン』1116号より
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