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「夏だけ染める色がある」、織物作家、上杉浩子さんの季節の楽しみ方。

季節を感じながら趣味や仕事をする上杉浩子さんの夏の準備とは?

撮影・小川朋央、徳永 彩(KiKi inc./上杉さん) 文・黒澤 彩

“1年かけて仕上げるホームスパン。夏にだけ染める色があります。”

 やさしいベージュの草木染、青胡桃は夏の恵みの色。|上杉浩子さん(織物作家)
 やさしいベージュの草木染、青胡桃は夏の恵みの色。|上杉浩子さん(織物作家)

庭の果樹や蔓(つる)の花、ハーブの緑が清清しいアトリエ兼自宅。上杉浩子さんは暑い季節も寒い季節も、ずっとここで羊毛を織っている。

「夏だけ染める色がある」、織物作家、上杉浩子さんの季節の楽しみ方。

「夏に向けてリネンなどを扱ってもいいのですが、私は1年を通してホームスパンの作品を手がけます」

毛織物も、糸の撚り方や織り方によってさまざまな風合いに。左のチェック柄ストールはまるでリネンのような肌触り。
毛織物も、糸の撚り方や織り方によってさまざまな風合いに。左のチェック柄ストールはまるでリネンのような肌触り。

手紡ぎ、手織りのホームスパンの織物はふんわりと軽く温かいことで知られる。当然、冬のものと思い込んでいたけれど、羊毛は天然の素材なので暑くてもベタベタせずに意外と快適。上杉さんは夏でも自作の小さめのストールを持ち歩いて、冷房などでちょっと冷えるときに肩に羽織るのだそう。

青胡桃染のベージュと藍の生葉染の水色を織り込んだマフラー。上杉さんがとても好きだという色の組み合わせ。
青胡桃染のベージュと藍の生葉染の水色を織り込んだマフラー。上杉さんがとても好きだという色の組み合わせ。

織ることは製作のほんの一部で、染める工程こそが季節の仕事になる。

青い胡桃の果皮は、採ったらすぐに染めなければならない鮮度が大切な素材。
青い胡桃の果皮は、採ったらすぐに染めなければならない鮮度が大切な素材。

「草木染をするのですが、夏にしか染められない色があるんです。私がいちばん好きな青胡桃染もその一つ。近くに住む師匠のお宅に胡桃の木があるのですが、初夏になると、いつ収穫できるかと気になって仕方ありません」

寝具は夏仕様に衣替え。リトアニアリネンのバスタオルを愛用している。
寝具は夏仕様に衣替え。リトアニアリネンのバスタオルを愛用している。

羊毛の草木染は色が出にくいものも多いのだが、青胡桃はきれいに発色する。なんとも優しく、それでいて深みのあるベージュに染まる。ほかにも夏に大きく育った藍の葉を、発酵させずにペースト状にしたもので染める生葉染も。この方法だと羊毛にストレスがかからないそう。草木染とはわからないほど明るく鮮やかな水色。

庭で採れたレモンで作るレモンシロップジュースは、夏の体に沁み入るおいしさ。
庭で採れたレモンで作るレモンシロップジュースは、夏の体に沁み入るおいしさ。

「私にとって、このベージュや水色は夏の色。もっとも美しく染まる時季を逃したくないので、季節に敏感でいたいです。自宅の庭ではなぜか染料ではなくレモンやハーブなど食べられるものばかり育てていますけど、そんなふうに季節を楽しみながら織物の仕事をすることが心地いいですね」

  • 上杉浩子

    上杉浩子 さん (うえすぎ・ひろこ)

    織物作家

    盛岡でホームスパンに出合い、東京の「清野工房」で学び、2010年より「hou homespun」名義で活動。ストールなどを中心に製作する。

『クロワッサン』1118号より

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