くらし

スポーツとロボット、そしてアートの融合。最先端の芸術が、夏の東京に庭園を作る。

〈Tokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13特集〉オリンピック・パラリンピックに沸く今夏、英国のアーティストが行うユニークなインスタレーションに注目。
  • 撮影・山内ミキ コーディネート・山下めぐみ

〈※本インタビュー記事は、2020年1月に行われた取材をもとに作成されたものです。現在、スペシャル13の各企画は、新型コロナウイルス感染症の影響及び東京2020大会の延期を受け、開催日程を見直しています。最新情報は、スペシャル13の公式サイトをご確認ください。〉

この夏の東京では、4年に一度のスポーツの祭典、オリンピックとパラリンピックが開催予定。それと同時期、東京ではさまざまな文化イベントが開催されます。そのうちの一つが、英国で活躍するアーティスト、ジェイソン・ブルージュさん率いる「ジェイソン・ブルージュ・スタジオ」が行うインスタレーション「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」。どうやらロボットアームで、枯山水のような日本庭園を作る、というものだそう…と聞いても、なかなか想像が追いつきません。

人間と自然、そして技術。
その共存の可能性を追求。

ジェイソン・ブルージュさん
アーティスト

ロンドンに制作スタジオを構え、デジタル技術を駆使してインスタレーションなどの作品を制作。LGやダイソンなどとのコラボも。

「作品の大枠を説明すると、テクノロジーと空間をテーマにしたパフォーマンスで、ロボットが自動で空間に動きを作る…といった感じでしょうか。このインスタレーションは、2017年にイギリス中東部のハルという都市で主催された『UK文化都市』というイベントの、フィナーレを飾った私の作品がベースになっています。鏡を持ったロボットが踊り、光を四方八方に反射させる内容で、世界で初めて、ダンスの動きをプログラミングさせた多数のロボットがアートパフォーマンスをしたものです」

今夏、東京で手掛けるのは、アスリートが生み出す体の動きをデータ化し、その動きを読み込んだロボット庭師が、枯山水の石庭の砂紋を描き出す、というもの。オリンピック・パラリンピックイヤーにふさわしい作品です。

「おっしゃるとおりオリンピック開催時の展示になるので、まず、スポーツ選手の動きを取り入れたいと思いました。作品は20Mを超え、砂利が敷かれた石庭にロボットを4台設置予定です。まだ実験段階ではありますが、アスリートの動きをデータ化し、それを私たちが開発したアルゴリズムによってプログラミングします。そのデータに従い、 “ロボット庭師” が、石庭のパターンを絶え間なく描き出すものになると思います。アスリートの動きは日によって異なり、サーフィンだったり、陸上競技だったり、あるいは球技だったり。もしかしたら、特定の有名選手の動きをサンプリングする、なんてこともあるかもしれません」

「鑑賞は作品を囲むプラットフォームの外側から」(ブルージュさん)。
ロボットアームが描き出す美しい砂紋の実験風景。
さまざまなアスリートの動きを研究中。

ロンドン大学で建築を学んだことが、作品制作の起点になっているそうです。

「建築や、その周辺のランドスケープや環境に、どのように動きを与えるか。当時からそういったことに興味がありました。もちろん建築は動かないものですが、そこにパーソナリティを与える、といった考えです。ちょうどテクノロジーやインタラクティブデザインが進化を始めた頃だったので、ロボット工学や動力学を使った作品をリサーチし、それを空間デザインに取り込んだことが、今につながっています。テクノロジーを使ったアートの魅力は、目では捉えにくいものを可視化できるところです。見えない何かとコラボレーションする、そんな感覚があるのがとてもおもしろい」

この作品は、日本文化への憧憬を、アスリートの動きのデジタルデータと、ロボットが構築するもの。

「エレクトロニック、ロボットと聞くと、無機質な印象を持つ方も多いでしょうが、彼らの動きは機械的である一方、実は瞑想的でもある。詩情豊かなアート作品に落とし込むことで、人間と自然環境、そしてテクノロジーが共存する可能性を見て欲しいと思っています。私にとって初めて日本で手掛ける作品で、長く目指してきたその可能性を表現できたらうれしいです」

自身のスタジオ内で。人などの動きに合わせ、シルエットが映し出されるパネルに手をかざすブルージュさん。
WWFの募金活動のため、’10年に制作された「Panda Eyes」。ずらりと並んだのは’60〜70年代のパンダの貯金箱。人がいる方向に、一斉にくるりと振り向く。オークションで売却され、現在はWWFに展示されている。
ロンドンの中心・バービカン・センターの、コンサートホールがあるビル下のトンネル部の壁に設置された作品。オーケストラの演奏などをデジタル処理したデータに合わせ、設置したピクセル状の小さなパネルが動く。

有機的な動きでロボットが描く、
美しき日本庭園を見に行こう。

The Constant Gardeners(ザ・コンスタント・ガーデナーズ)
使用するロボットは、工場などで使われているタイプ。工業的な雰囲気のアームが、どんな動きで優美な砂紋を描き、そして庭園を作るのか。砂に描かれる模様は刻々と変化するそう。期待が高まる。
企画者/Jason Bruges Studio(イギリス)
会場/上野恩賜公園 竹の台広場
特別協力/ブリティッシュ・カウンシル
 

Tokyo Tokyo FESTIVAL(TTF)とは?

オリンピック・パラリンピックの開催都市として、東京を文化の面から盛り上げるため、多彩な文化プログラムを展開する東京都の取組です。中でも、「TTFスペシャル13」は、国内外2,400以上の公募から選ばれた、TTFを象徴する13のプロジェクト。


他にもあります!
Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13

※各イベントの内容は変更になる可能性があります。


放課後ダイバーシティ・ダンス 地域の児童館など都内3か所で、ダンスをつくるプラットフォームを創出するプロジェクト。菅原小春や尾上菊之丞、砂連尾理など第一線で活躍するダンサーや、地域で多様なダンスに関わる人々がワークショップを行い、子供たちが自ら振り付けを考え、”踊りをつくる楽しみ”を体験してもらう。企画者/ADD実行委員会 会場/港区、国立市、日の出町 https://addance.net 撮影/植田洋一
光の速さ – The Speed of Light- アルゼンチン出身の演劇・映像作家のマルコ・カナーレによる演劇。東京在住のシニアたちと渋谷から街をめぐるツアー型の演劇。また、短編動画やドキュメンタリー映像も展開予定。今の、そして未来の東京を見つめる。企画者/マルコ・カナーレ(アルゼンチン) https://tsol.tokyo Photo: Juan Ignacio Fernández and Ignacio Ragone
シークレット企画 TTFスペシャル13のイベントは全部で13。実はまだオープンになっていない、スペシャルな企画が1つある。詳細は近日発表予定。公式サイトをチェック。

取材協力:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
問い合わせ先:Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13事務局(Tel:03-6256-9921)
Tokyo Tokyo FESTIVAL 公式サイト https://tokyotokyofestival.jp

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