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『はたらく動物と』金井真紀さん|本を読んで、会いたくなって。

撮影・千田彩子

動物は働くことを喜んでいるのかも。

かない・まき●1974年、千葉県生まれ。ライター、イラストレーター。うずまき堂代表(部下は猫2匹)。世界の断片を拾い集めて、多様性をおもしろがることを任務としている。著書に『世界はフムフムで満ちている』『酒場學校の日々』。
かない・まき●1974年、千葉県生まれ。ライター、イラストレーター。うずまき堂代表(部下は猫2匹)。世界の断片を拾い集めて、多様性をおもしろがることを任務としている。著書に『世界はフムフムで満ちている』『酒場學校の日々』。

「おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな」という松尾芭蕉の句がある。楽しい夏の風物詩も、見ているうちにだんだんとかなしくなってくる。せっかくの獲物を自分が食することを許されない鵜の切なさがひたひたと胸に迫る句だ。フリーライター・金井真紀さんはこの句に惹かれて、人のために働く動物たちは、本当はどう思っているのかを知りたいと旅に出た。

本書に収められているのは、長良川鵜飼の鵜、畑を荒らす猿を威嚇するモンキードッグ、昔ながらの方法で畑を耕す馬(馬耕)、盲導犬など、5つの「働く生き物と人」の物語である。

「動物に話を聞くことはできないから、結局は、一緒に暮らす人たちに取材するしかなかったのですが、とにかく知らないことばかりでした」

とくに金井さんに強烈な印象を与えたのが鵜飼。鵜飼に使われるウミウは、本来は渡り鳥だが、茨城県日立市の「鵜狩場」で生け捕りにされ、野生から人間に飼われて鮎を獲るという第2の鵜生が始まる。取材に応えてくれた鵜匠によれば、捕まえてから3カ月、人の手でやさしく撫でられているうちに慣れ、羽の筋を切らなくても飛んで逃げないようになるのだそうだ。そして何より驚いたのが、漁に出て帰ってくると鵜の表情がはつらつとしている、と鵜匠が言ったこと。

「野生の鳥がこんなにも早く人間に慣れることも驚きですが、仕事をしているという意識があるのでしょうか。鵜飼の鵜は死ぬ間際まで漁をするそうです。鵜匠自身もできる限り仕事をして、カラダが動かなくなった3日目で死にたいと言っていました。それが自然界のスケジュールだと」

鵜匠は仙人のようなおじいさんで、本など読まないと言っていたのに、金井さんが贈ったこの本を「よく書けている」と喜んでくれたという。

「盲ろう者の男性を取材した時には、盲ろう者が盲導犬と暮らすことはアメリカやイギリスではめずらしくないが、日本ではまだまだ一般的でないことも知りました。でもこの男性は、盲導犬のおかげで夜も居酒屋にビールを飲みに行くことができるようになったと喜んでいましたよ」

働く動物と一緒だからこそ得られる人間の自由もあるのだ。文章の間に挟み込まれる金井さんのイラストが、動物の体温を感じさせるようなぬくもりで読者を包み込んでくれる。

ころから 1,380円

ころから 1,380円

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