『英米文学のわからない言葉』金原瑞人 著──気になっていたあの単語の意味は?
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
うろ覚えなので間違っているかもしれないが、中学生の頃に『風と共に去りぬ』を同級生のNさんから借りて読んだ時、主人公スカーレットが恋するアシュレイと結婚した女性、メラニーの容姿の説明に「ハート型の顔」とあったと思う。この表現はその後も時折欧米文学で見かけたが、たぶんそれが初見だったはずだ。以来、私は『風と共に去りぬ』の話になると、心のどこかで♡の顔の形をしたメラニーを思い浮かべていた。が、本書によると、「ハート型の顔」の解釈はまちまちの様子。広めの額・高い頬骨・ほっそりした顎を指すケースもあれば、顎から眉のあたりまでがハートかどうかで判断するケースもあるらしい。うーむ。
そんなふうに、勝手に解釈したりイメージを作り上げている英米文学の表現はたくさんある。本書には「ああ、これよく分からなかったんだよな」という言葉がいくつも出てくる。たとえば、アルコーヴとか、石板とか、ヒマシ油とか。他に、最近は上着の「ジャンパー」も「ジャケット」と呼ぶことが多いなどの使われ方の変遷、あるいは、日本人にはなじみのない言葉をどのように翻訳するか、といった工夫が分かるのも楽しい。もっと読みたい!
『クロワッサン』1158号より
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