新しいお箸で新年を始めませんか? 老舗箸店に聞いた“マイ箸”の選び方
撮影・文 岡のぞみ
「マイ箸」は日本独自の文化
日本料理は「箸でいただく」ことを前提に発展してきた文化です。懐石料理では、一品ずつ丁寧に運ばれる料理を箸だけで味わいます。箸で切る、つまむ、ほぐすなど、ナイフやフォークでは表現できない繊細な所作が多く、使いやすさが重視されます。
「マイ箸」の文化も日本ならでは。家族それぞれが自分専用の箸を持ち、他の人の箸は使わないというのは、世界的に見ても珍しい習慣。そのため、箸のデザインや素材など千差万別。毎日、毎食、使うことで「箸にはその人の魂が込められる」と言われるほど。使用後には、「他の人に使われないように」という意味を込め、昔は箸を折ってから捨てるのが当たり前だったそう。
箸先の形で持ちやすさが左右される
箸のさまざまな歴史や文化について教えてくれたのは、1905年に東京・日本橋で創業した老舗箸専門店「川上商店」。
川上商店の箸は、おもに、黒檀、紫檀、鉄木など木の素材を生かして作る「江戸唐木箸」。これらは硬く耐久性があり、家を建てる際の床柱にも使われるほど。また、同じ素材からできていても、持ち手の特徴や箸先の形状によって、持った時の感覚が変わるそう。さらに、四角箸、五角箸、八角箸…と、持ち手の形だけでも選択肢は多く、常時500種類以上の箸が店頭に並びます。
箸選びで重要なのは「持ちやすさ」や「掴みやすさ」。川上商店が特に推奨するのは、箸先が四角形のもの。箸先が丸いものと比べると、指の力が先に伝わりやすく、こんにゃくや豆など、滑りやすい食材でも安定して掴むことができます。特に、力を入れづらい子どもやシニアの方におすすめの形だそう。
自分に合った箸の選び方
では、どうやって自分に合った箸を見つければよいのでしょうか。川上商店では、まず実際に手に取ってみることを勧めています。
「箸の長さは、親指と人差し指を直角に広げた長さの1.5倍が目安です。でも、これはあくまで目安。実際に持ってみて、しっくりくるかどうかが一番大切です」(川上商店・川上孝幸さん)
重さも重要な要素だそう。軽すぎる箸は頼りなく感じられ、重すぎる箸は疲れてしまいます。木材によって重さは異なるので、いろいろな素材を試してみましょう。
色や木目の美しさも、選ぶ楽しみのひとつ。食卓に置いたときの佇まい、料理との調和を想像しながら選ぶのも素敵ですね。
職人の技術と経験が詰まった箸ができるまで
川上商店では、東京都と長野県の工房で箸作りを行っています。角材を少しづつ削り、五角形や八角形に仕上げていきます。特に箸先は繊細な作業。一つひとつ、目と手で確認・調整し、箸の形に削り上げていく工程は、まさに職人技。常時3〜4人の職人が作業を行う東京工房では、50膳仕上げるのに3日かかるそうです。
今回、特別に工房で箸を削る工程を見学、体験させてもらいました。
ベルトサンダーを使って、箸の面を削りながら模様を描く工程に挑戦。天に竜が昇るイメージの「昇竜」という模様を描きます。削り出しの面と終わりの面が同じになるよう均等に削らなければならず、想像以上に難しい工程でした。ひとつの箸ができあがるまでには、長年培われた技術と、木という素材への深い理解が必要なのだと実感します。
AKOMEYA TOKYOで川上商店の箸を
今回削りの体験をした「昇竜」模様の箸は、大(23cm)と中(21cm)の2サイズ展開で、「AKOMEYA TOKYO」でも2026年1月上旬より販売。丁寧に使えば長く愛用できる一膳です。
新しい年のはじまりに、新しい箸を迎えませんか。毎日の食事が、少しだけ特別な時間になるはずです。
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