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【誌上お悩み相談】スパッと切れない友人、職場の人間関係

拗れてしまった縁は断つべきか、自分自身が変わるべきか。心身を疲弊させる人間関係の問題を、専門家に尋ねました。

文・長谷川未緒

優柔不断な友にイライラ

【誌上お悩み相談】スパッと切れない友人、職場の人間関係

高校時代からの4人グループと今でも会うのですが、年々ストレスが溜まるように。というのも、店探しは外食店に詳しいこともあり、私がいつも担当しているのですが、行く店がとにかく決まりません。ひとりが変わった料理が食べたいと言うのでモロッコ料理の美味しい店を探して提案したのに、ほかのふたりが「モロッコ料理ってどんなの?」「私は食べられるかなあ」などと言い出したり……。職場の仲間との食事はすぐに決まるため、余計にイライラ。それ以外は大好きな仲間なので縁を切ることは考えられないものの、彼女らの優柔不断さにストレスを抱えてしまっています。(40代・会社員)

長年の友だちだと、お互いに甘えや期待があるものです。この方は、自分だけが負担をかけられているように感じてモヤモヤしているのかも。でも、もしかしたらお友だちからは「あの人は自分で決めたいんだろう」と思われている可能性もありますから、一度、自分の気持ちを伝えてみたらどうでしょう。たとえば、「私が担当のようになっているけれど、ちょっとしんどいんだよね」とか、「最近忙しいから、次から持ち回りにしない?」みたいな感じで、あくまでさらっと提案してみてはいかがでしょうか。このままひとりだけで抱え込んでしまうと、何かの拍子にイライラが爆発してしまうこともあると思います。

もっとも、ほかの人に任せたときにいつまでも決まらないとか、何も提案がなされず会う機会もなくなるといったことが起きる可能性はあります。そのときは、「縁を切りたくない気持ち」と、「自分だけがストレスを抱えたくない気持ち」を天秤にかけるときではないでしょうか。いずれにしても、自分が犠牲になってつながる関係はあまり長続きしないように思います。

友だちがいないことに不安

煩わしい人間関係が一切ないことに、それはそれで不安を感じます。両親が早くに他界し、連絡を日常的に取り合う親戚もおらず、学生時代の友人とも深い付き合いはありません。仕事仲間やママ友も、フラットな関係の友だちではないですし、子どもが巣立ち、夫が先立ったら孤独になりそうです。仕事で出会った人にこの話をしたら「だって他人に興味がないんでしょ? それでいいんだよ」と言われましたが、いいのでしょうか。(50代・会社員)

実は私も、しょっちゅう会って、いつでも何でも話せる家族の延長のような友人はいないんですよ。将来のことを考えると孤独になりそうで不安を覚えるというのも、似たような状況なので、非常によくわかります。

同類の立場からご提案したいのは、友だちがいない不安の本質は何なのかを考えてみることです。たとえば、言いたいことをなんでも話せる相手がいないというのが心配ならば、それは必ずしも友人ではなく、カウンセラーなどでもいいかもしれません。あるいは、何かしたいことがあるのに、それがひとりだとできないということならば、サークルや教室に通って仲間を探すという手もありますよね。私も最近、システマという武術を始めて、一緒に同じ体験をする仲間ができたことで、寂しさが紛れている気がします。また、そういう人間関係から、友人に発展していく可能性もあります。

友だちというのは、恋人と同じで、作ろうと思って作れるものではないんですよね。理想を思い浮かべはしても、理想どおりの人はなかなかいませんし、仮にいたとしても、自分の時間という代償を払わずにその関係を続けることはできません。文章を見る限りでは、この方は、そもそも人間関係を煩わしいものだと考えているようですし、おそらく人とベタベタとした付き合いをしたいわけではないのだろうと思うんです。でも、いったん友人ができて、こちらが言いたいことを聞いてもらったならば、相手の話も聞かなければならない。毎日電話で30分話すとか、週に1回会うとか、現実的な付き合いを考えると、面倒ではないですか?

思っているほど友だちは素敵なものじゃないかもしれませんし、自分も案外、欲しがっていない可能性もありますよ。未来の孤独に対する不安は、家族がいても友だちがいても、簡単に埋まるものではありませんし、そもそも他人が埋めてくれるようなものではないと思います。抱えていくのか、解消するのか、紛らわすのか、自分で何かしていく必要があります。むしろ、やりたいことやなりたい自分を追求していくうちに、孤独感が紛れるということもあるのではないでしょうか。

友人と縁を切りたい

若い頃から仲良くしてきた仕事関係の友人は、マウントを取るような発言や、アドバイスと称した上から目線の発言が多く、人を褒めることをしないタイプ。昔から違和感がありましたが、その頻度がだんだん上がってきたので、もう友だちとしての付き合いはやめ、プライベートでは会わないようにしています。でも仕事では関わることが多く、そして彼女はまだ友だちだと思って接してくるので、距離感を取るのが難しいです。どうやって遠ざけたらいいでしょうか。(50代・自営業)

人との距離って、縮めるのも大変ですが、一度縮まった距離を離すのも、すごく労力が要りますよね。これは人間関係における永遠の課題ではないでしょうか。痛みを伴わずに距離を取ることは本当に難しい。

この方は、プライベートでは距離を取れているということなので、現状うまくやっている気がします。もっと遠ざけたいという気持ちもわかりますが、仕事での付き合いは必要なわけですし、必要なものまで断ち切ると支障が出ますよね。

おそらく仕事での付き合いをもっと割り切れると、ラクになるのではないかと思います。実は私も、合わない人と関わらないといけない時期があり悩んだのですが、そのときに有効だった方法がありますのでお伝えしますね。それは、苦手な人と実際に会っている時間と、それ以外の時間を比べてみるんです。相手と会っている間は、距離感もおかまいなしに接してくるので嫌な気持ちになるけれど、でも実は一緒にいる時間はそんなに長くない。累計したとしても、私が持っている時間全体からすれば、割合はごくごく小さいわけです。そう考えたら、あまり大したことはないと思えるようになりました。全くその人と会わずにいられる時間にまで、イライラした気持ちを引きずる必要はないわけですから。

相手のことを鬱陶しいと思っていると、やっぱり態度に出てしまうんですよ。そうすると相手は、友だちだと思っているのに避けられている? そんなことないよね? とばかりに、余計に関わろうとしてきたり、絡んできたり、まとわりついてきたりします。こちらが完全に割り切って、普通の態度で接するようにすると、相手もそういった確認作業をしなくなりますから、煩わしさが減るかもしれません。

もしも相手と一緒にいる時間が長いならまた違った考え方をする必要があるかもしれません。しかしこの方の場合は、すでにうまくやれていると思いますし、あとは、ちょっとした心の調整で済むのではないでしょうか。

ご近所付き合いが重い

同じマンションの住人に気に入られすぎてしまい、頻繁に連絡やお誘いが来ます。会うたびに愚痴を聞かされ、「つらいことがあるとあなたを思い出している」と言われてしまうくらい。角を立てずに距離を置くにはどうしたらいいでしょうか。(40代・主婦)

同僚の依存をかわしたい

職場の同僚が、まめに連絡を取ることを強要してきたり、周囲に私のことを「親友」と吹聴します。今の部署に女性社員が私と彼女しかいなかったから一緒にランチに行くようになっただけで、私としては友だちという認識はなく、私用のLINEなども教えていません。ただインスタグラムはつながっているため、ほかの人と遊びに行ったことを投稿すると「なんで誘ってくれないの?」とへそを曲げます。仕事とは関係ないので上司にも相談できず彼女の存在が息苦しいです。(40代・会社員)

こちらも、距離を取りたいというお悩みですよね。おそらくふたりとも、魅力的な方なんだと思います。人当たりがよくて、素敵で、一緒にいるとすごく心地よいから、ご近所や同僚から依存されてしまうのでしょう。

こういうケースは本当に難しいんですが、「できるだけ、心にもないことを言わない」ようにするのが大事だと思います。好きでもない人から好かれやすい方は、無意識に相手を喜ばせることを言ったり、本当は楽しくないのに相手に気を遣って楽しそうに振る舞ってみせたりすることがあるんですよね。

また、ほんの少しずつ、相手に対して自分の「地」を出していくのも大切だと思います。現時点では、相手から「この人はいつも笑顔で、私のことを気にかけてくれる」と幻想を抱かれている可能性があります。無理に笑顔を作らず、疲れているときは疲れた顔をするとか、連絡を取ることを強要されてもしないとか、相手がほんの少し幻滅するような態度を取ってもいいのではないかと思います。ありのままでいることで、むしろ付き合いがラクになるかもしれません。

職場の居心地が悪い

女性ばかり、しかも30代のうちにほぼ全員が退職するような職場で40代になりました。気にしすぎかもしれませんが、休憩中などのちょっとしたコミュニケーションの中で、年下の同僚たちから気を遣われているのがわかる日々に疲れています。「ここでいつまでも仕事を続けるイメージが持てない」ことで、将来に対する不安も大きくなってきて……。職場は職場と割り切って、習い事や学生時代の友人と会うなどし、別のコミュニティをたくさん持つことでストレスを発散しているのですが、解決策になっているのでしょうか。(40代・会社員)

気を遣われることは、悪いことではないと思います。この方も、年下の同僚に友だち口調で話しかけられたり、同年代のように扱われたりすることを望んでいるわけではないでしょう。ただ自分が周りから浮いていないかを気にしているように感じます。その気持ちは私も非常によくわかるのですが、極端な話、職場では多少浮いていようが、仕事ができて役に立てていればまったく問題はありませんから、あまり気にしなくていいと思います。

30代のうちにみんながいなくなってしまう職場ということは、年上のロールモデルがいないわけですよね。もしかするとこの方は、人間関係ではなく、仕事そのものに不安があるのかもしれませんね。そういうときは思考実験がおすすめです。たとえば、仕事内容は全く同じで、同世代や年上の人も大勢いるような職場だったら、この仕事を続けたいかどうか。続けたいと思うのなら仕事には満足しているのでしょうし、何か違うと感じるのだったら、仕事そのものに違和感を覚えているのではないでしょうか。こうした思考実験で、一度気持ちの整理をしてみてはいかがでしょうか。

  • 話を聞いた人

    川添 愛 さん (かわぞえ・あい)

    言論学者

    国立情報学研究所特任准教授などを経て、言語学や情報科学をテーマに著作活動を行う。『「わかってもらう」ということ』(KADOKAWA)など著書多数。

『クロワッサン』1149号より

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