「寝れば治る」は遠い過去──眠りの質を底上げ! 50代の睡眠にまつわる3つのトピック
イラストレーション・秋山 花 文・原 千乃
眠りと咳のクリニック虎ノ門 院長
医学博士、日本睡眠学会睡眠総合専門医・指導医、産業医。多岐にわたる睡眠障害全般の診療と臨床研究のほか、講演など睡眠についての啓発活動を行う。
一日の疲労回復には欠かせない睡眠。でも若いころのようにぐっすり眠れず“リカバリー感”を実感できない50代前後の女性は多いのでは? 「この年代の女性は家庭や仕事で責任のある立場になることが多く、ストレスや不安を抱えやすい。さらに更年期特有の女性ホルモンの激しい変動も重なり、睡眠の質が低下しがちです」と、睡眠の専門医・柳原万里子さんは話す。
「また日本人のどの年代の男女よりも睡眠時間が短いのが50代女性*1。その過半数は6時間未満であることが報告されています*2。睡眠の質が低下しやすい背景に加え、睡眠時間が短いことが重なり、睡眠にまつわるさまざまな悩みを抱えやすいのです」(柳原医師)
50代の睡眠にまつわる3つのトピック
Q 加齢とともに眠りづらくなるって本当?
A 年齢を重ねるほど、眠る力は衰える。ぐっすり眠れなくなるのは自然な変化
「男女問わず、体だけではなく睡眠も年をとります。ベッドの中にいる時間のうち“実際にぐっすりと眠ることのできる時間=眠る力”は15歳で8時間、25歳で約7時間、50代では6時間強といわれています*3。もちろん個人差はあるのですが、若いころのように8時間ぐっすり眠りたいと思っても、そうはいかなくなるのが自然な変化です」(柳原医師)
Q 50代以降のいい睡眠とは?
A 日中に大きな支障がないくらい眠れていれば、完璧でなくてもOK
朝起きたときに熟睡感があり疲れがとれているならば“快眠=ベストスリープ”といってもいいでしょう。しかしながら50代女性の睡眠はなかなかうまくいかないもの。完璧を目指して不安になるよりも、何のために眠るのかというところに立ち返り、「日中に頭も体も心もある程度元気に効率よく活動できていればOKを基準に、自分にとっての“良眠=ベタースリープ”をみつけましょう」(柳原医師)。
Q いい睡眠のために取り入れたい生活習慣は?
A 昼夜の過ごし方にメリハリをつけ、寝る時間までに多くの疲れをためること
年齢とともに衰える“眠る力”をサポートするためには日中の過ごし方が大切。「昼は明るい光を浴びて活発に活動し、積極的に脳と体を疲れさせましょう。より多くの疲れをためてベッドに入ると深くよく眠れます。せっかくためた疲れを途中で解消してしまわないよう、昼寝は15時まで30分以内に留め、日没後のうたた寝、寝落ちはNGです。就寝前は心配事を避け、照明を落としてリラックスを。心と体をほぐせるような心地よい睡眠ルーティンをつくることもおすすめです」(柳原医師)
『クロワッサン』1149号より
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