からだ

代表的な腰の病気、椎間板ヘルニアの症状や治療法。

骨が原因の腰痛について、整形外科医の伊藤晴夫さんに話を聞きました。
  • 文・山下孝子  イラスト・宇和島太郎、松元まり子 

椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)

代表的な腰の病気で、腰の椎間板の髄核(ヘルニア)が本来位置するべき場所からはみ出し、周囲の神経を圧迫することで痛みが生じます。

椎間板ヘルニアの症状が現れるのは椎間板の強度が下がり始める30~40代くらいからで、重い荷物を持つなど、腰に無理な負担をかけたことをきっかけに発症するケースが多くあります。

主な症状としては、腰やお尻、足の激しい痛みやしびれが挙げられます。また、坐骨神経痛の症状を伴う場合が多く、腰よりも足に痛みやしびれが出やすいのが特徴です。神経に障害がない場合は、痛みが出ないこともあります。

椎間板ヘルニアには、はみ出した髄核が圧迫する箇所によって「神経根型」と「馬尾型」の2タイプに分けることができます。

神経根型は症状が進行しづらいのに対し、馬尾型は悪化しやすく脊柱管狭窄症に移行する可能性があり、トイレがしづらくなる排尿・排便障害を伴う場合は、手術が必要になることもあります。

そのため、尿が出にくい、または肛門周辺にしびれなどの症状がある場合は馬尾型の可能性を疑い、早急に整形外科を受診するようにしましょう。症状を放置して処置が遅れると、手術をしても後遺症が残ることもあります。

ただし、早急な手術が必要なほど重度のケースは比較的少なく、多くの場合は6か月もたてば自然治癒するため、保存的療法をとるのが一般的です。

なるべく腰に負担をかけず、正しい姿勢や適度な運動などセルフケアを怠らない一方で、薬物療法、コルセットの装着、温熱療法、または神経ブロック注射などを行いながら経過を観察します。

3か月ほど保存的療法を続けても効果が見られない場合や、一度症状が治まっても短期間で再発する場合は、詳しい検査を行い、髄核を取り除く手術の検討が必要となります。

【椎間板ヘルニアの構造】

 ↓
髄核が圧迫する部位によって、神経根型と馬尾型に分かれる!(脊柱管狭窄症と同じ)

腰痛以外の症状

【足のしびれ】
坐骨神経痛によって腰よりも足にしびれや痛みが出やすい傾向があります。

【痛む側に体が傾く】
痛みが強い側をかばって体が傾く「疼痛性側弯」という症状が起きることもあります。

骨・椎間板・神経に支障が出て痛む腰痛とは?

痛みが出る部位や範囲、また痛みの強さなど、腰痛といっても症状の現れ方はさまざまですが、原因が特定できるかどうかで大きく二分されます。

特定の原因はなく、姿勢の悪さや運動不足、血行不良、肥満、疲労、加齢などの複数の要因が絡み合って発症する腰痛は、原因を特定しにくいため「非特異的腰痛」と呼ばれています。いわゆる一般的な腰痛のことで、正しい姿勢や適度な運動などのセルフケアで改善が可能な腰痛です。

一方、症状や医師の診察・検査によって腰痛の原因と部位が特定できる腰痛は「特異的腰痛(器質的腰痛)」と呼ばれ、非特異的腰痛に比べると少数派になります。

脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、腰椎変性すべり症、椎間板ヘルニア、骨粗しょう症といった骨の病気、さらに感染性脊髄炎、外傷、内臓の病気など原因がはっきりしていますが、症状の改善には治療が必要になることが少なくありません。

伊藤晴夫

伊藤晴夫 さん (いとう・はるお)

整形外科医

メディカルガーデン整形外科院長。JCHO東京新宿メディカルセンター(旧東京厚生年金病院)元副院長・整形外科部長。岐阜大学医学部卒業。腰痛疾患や股関節疾患の臨床に長年携わり、一流アスリートの治療にもあたっている。『腰痛の運動・生活ガイド』(日本医事新報社)、『腰痛をすっきり治すコツがわかる本』(永岡書店)など、腰痛関連の著書・監修書多数。

※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。

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