頑張らない、完璧を目指さない。大掃除の鍵は事前の準備でした。
イラストレーション・グレース・リー 文・小沢緑子
年末に何日もかけて大掃除をする人は多いが、必ずしもまとめて一気に行う必要はないのでは、と言うのは、片づけアドバイザーの石阪京子さん。
「以前は私も年末に大掃除をしていましたが、忙しいと余計焦るし疲れるし、いいことはひとつもなかったです(笑)。それに寒くて水が冷たい冬に外で震えながら窓拭きしたり、落ちにくい油汚れの掃除をするのも非効率的に感じて」
以来、毎日行う“ちょこちょこ掃除”と、それ以外の念入りにしたい大物掃除は事前にスケジュールや段取りを決めて、季節で分散させているという。
「外回りや水を使う大物掃除は気候のいい春から秋頃までに、油汚れは気温も水温も高く汚れが緩みやすい夏に済ませます。すると年末に大掃除しなくてはいけないほど、家は汚れません」
さらに、と続ける。
「こまめに掃除すると家は傷まず、余計な修繕費用がかかったり請求されることもなくなります。持ち家、賃貸に限らず、家は“資産”という視点を」
今回、石阪さんが提案する「ムリなく家の掃除を進める段取り」を紹介。
「前提として、家の中の不用品を捨ててモノを減らし、掃除がしやすい環境に整えることを忘れずに。また、100%きれいにしようと頑張りすぎない。日々の掃除も大物掃除も7〜8割きれいになればよし、と考えたほうが気持ちはラクだし掃除が負担になりません」
この年末、掃除のあり方も見直しを。
[準備1]年間スケジュールを立てる。
家の掃除を進める段取りとして、真っ先に行いたいのが来年からでも年間スケジュールを立てること。
「毎日の掃除以外の大物掃除は、気候を味方につけて。外回りや窓、ベランダなど、水が使える場所はホース等で水をかけて丸洗いすれば汚れがスッキリ落ちます。暖かくなる春から夏、秋頃までに行えば乾きも早いです。逆に年末などの寒い時季は、冷蔵庫の庫内や食器棚の中など、暖かな室内でできる掃除だけ行えばつらくありません」
スケジュールをおおよそ決めたら次は家族と一緒に「誰が」「どの場所」の掃除を担当するか決める。
「カレンダーに『掃除場所』と『担当者名』を書き込んだ付箋を貼って、家族で共有しましょう」
掃除が済んだらはがしていけば達成感が味わえるし、都合が悪くなれば別の日に貼り直せばいい。
「付箋の色は担当者ごとに色を変えるとわかりやすく、一目瞭然です」
[準備2]家族会議をする。
掃除はひとりで頑張らないこと。家族で分担をすると共同生活者という意識が芽生えてくるという。
「そのための一歩を踏み出すには『家族会議』を開くことが大切です。人は何のために掃除するか動機が明確にならないとなかなか動かないもの。『いつでも人が呼べる家』『疲れを癒やすきれいな家』など、家族と一緒に目標にしたい理想の暮らしを描きながら話し合いましょう」
その後に掃除場所をすべてリストアップして〝見える化〟をする。
「子ども部屋、夫の書斎など、個人のスペースは各自で掃除するのが原則。それ以外の水回りや共有スペースを分担します」
また、家族全員で掃除する日の食事は外食やデリバリーにするなど、ご褒美も用意すると俄然やる気に。
「ひとつの目標に向かって取り組む、楽しいイベントにすると家族もどんどん乗ってきますよ」
●[掃除リスト]
〈外回り〉
□ベランダ
□窓ガラス
□サッシの溝
〈玄関〉
□たたき
□下駄箱
□照明の笠
〈各自の部屋・スペース〉
□子ども部屋のベッド下
□夫の書斎の本棚上
□夫婦の寝室のクローゼットスペース
〈リビング〉
□照明の笠
〈キッチン〉
□食器棚の上
□電子レンジの中
□冷蔵庫の庫内
□魚焼きグリルの中
〈洗面所・風呂・トイレ〉
□床
□壁
□換気扇
□コーキング(目地の補修)
[準備3]使用する道具を揃える。
「掃除の段取りがわからないという人ほど、家の中に使っていない掃除道具がたくさんある傾向が。収納棚にあるものを床に全部出し、この際、使い切るか処分を」
石阪さんが、毎日使うのが、箱入りのマイクロファイバークロス。
「布巾ほどの薄さが使いやすく、常にエプロンのポケットに入れておいて、汚れに気づいたらそれでスッと拭き取る。キッチン、お風呂、最後に掃除で使用の順にお下がりにして最後まで使い切ります」
サッシの溝の汚れが気になるときは、溝用のクリーナーも活躍。
「いろいろ試しましたが、専用のクリーナーは隙間にスッと入る薄さやしなり具合が使いやすい。水を入れたペットボトルに装着して加圧すると勢いよく水が噴射する、加圧式おそうじスプレーも重宝。便利グッズも、自分が使いやすいスタメン選手だけに絞って用意しておけば、ムダがありません」