耳鼻咽喉科医に聞く感染症対策のための水分補給の方法。
液で適度に湿った「うるうる粘膜」を維持するには、どうすればよいのかを紹介します。
文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子
粘膜は外敵との戦いの最前線。
人間の鼻や口はのどの部分で合流し、そのまま食道、胃、腸、肛門まで一本の管(消化管)でつながっており、その内側は粘膜によって覆われています。
粘膜はカラダの内側でありながら呼吸や食べ物に含まれる異物に接する場所でもあるため「内なる外」とも表現される部分で、細菌やウイルスなど人体に有害なものが侵入してきたときに備えて、高い免疫力を持っています。
しかし、粘膜の免疫力が高いのは粘液によって常にうるおっているからです。乾燥や炎症によって粘膜がガサガサに荒れてしまえば、免疫力は低下してしまいます。
そこで、粘膜のうるおいを保つためにはどうしたらよいのか、インドの伝統医学アーユルヴェーダを診療に取り入れている、耳鼻咽喉科の医師である北西剛さんに話を聞きました。
粘膜を荒れさせる要因は複数あり、適度に湿った「うるうる粘膜」を維持するためのルールを紹介します。
カラダへの水分補給は粘膜にも効果がある
冬になるとトイレが近くなるからと水分の摂取を我慢する人もいますが、カラダの水分が不足すると、粘膜のうるおいも不足。適切な水分補給法を紹介します。
【粘膜のうるおいには、やはり水分補給が大切。】
粘膜の健康のためにふさわしい水分は?
こまめな水分補給は口やのどの粘膜の乾燥予防によいと聞きますが、具体的にどんな水分が適切でしょうか。
「コーヒーのようにカフェインが多く含まれる飲み物は、利尿作用があるので、補給する水分に含めないほうがよいでしょう。私が診療にも取り入れているアーユルヴェーダでは、日々の養生法として白湯(さゆ)や湯冷ましをすすめています。どちらも鍋に蓋をせずに沸騰させて、水に火と風の要素を与えてあげるのが特徴です。また、スロートコートなど、のどにやさしいハーブティーも、おすすめですね」
なお、水分を摂取するときもそのまま飲み込むだけでなく、よく噛みながら飲み込むと、唾液の分泌が促されてよいそうです。
ちなみに、うがいで口やのどの乾燥は予防できるのでしょうか。
「外から戻ったときのうがいはよいのですが、外出と関係ないうがいはかえって唾液を減らして口やのどの粘膜を乾燥させるのでご注意ください」
1.アーユルヴェーダ式白湯を飲む。
●のどの渇きを感じる前に飲む。
蓋をせずに水を沸騰させ、1度に200ccを65度以上の熱めの温度で飲む。湯冷ましの場合は、約10分沸騰させてから冷ます。
2.のどにやさしいハーブティーを飲む。
●ノンカフェインで寝る前もOK。
ハーブティーは色、味、香りがそれぞれ異なるため、気分転換やリラックスにも最適で、ノンカフェインな点も魅力。
●マロウブルー
ややとろみがあり、それがのどの粘膜などを保護する作用を持つ。レモン汁を垂らすと色が変わる。
●ミントティー
独特の香りにはのどの違和感を和らげ、鼻通りをよくし、胃腸の働きを整えてくれる作用がある。
●スロートコート
「のどを守る」という名前通り、のどの働きを向上させるハーブやスパイスをブレンドしたお茶。
『Dr.クロワッサン 感染症に負けない、カラダをつくる。』(2020年11月30日発行)より。