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見立てということは、使う側の創作なんですよ――辻協(陶芸家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、うつわ使いの名手から「見立て」の極意を教わりましょう。
  • 文・澁川祐子
1977年12月号「暮しの中の『うつわ』」より

見立てということは、使う側の創作なんですよ――辻協(陶芸家)

辻清明さん(1927-2008)、辻協さん(1930-2008)という、目利きの陶芸家夫婦がうつわについて語る連載5回目は「見立て」がテーマ。日本ならではの「見立て」の文化は、主として茶の湯の世界で育まれてきました。

その代表が、「名物」と称される井戸茶碗。もとは朝鮮で日用雑器として使われていたものが日本に渡り、茶人のあいだで抹茶碗として重宝されるようになります。すり鉢は水指や花入れに、古唐津の小さい片口は茶碗にと、日用のうつわが茶道具へと転じた例をいくつか挙げ、茶人の眼によってそこに新しい生命が吹き込まれたと協さんは語ります。

見方を変えることで、新たな使い方が創出される。だから、見立ては<使う側の創作>だというわけです。

それは何も難しいことではなく、庭木の花を生けるのに適当な花瓶がなければ、食器棚から引っ張り出してきた徳利や使い古した急須を花生けとして使えば、それも立派な見立てだといいます。

<自分なりに新しい別の使い道を発見する。そういった“生きた眼”で物を見つめるって、とても大事なことだと思うんです>

身のまわりのものを、あらためて“生きた眼”で見直してみる。見立てを楽しむことは、日々の暮らしにちょっとした驚きや新鮮さをもたらすヒントでもあるのです。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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