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【器好きのいつもの食卓】あらゆる料理を受け止めてくれる南イタリアの古い焼き物。

  • 撮影・徳永 彩

好きで手に入れた器なら、 何を盛っても好きだと思うはず。

リビングダイニングにあるタンスの引き出しを開けたとたんに目に飛び込んできたのは、きちんと収められた、なんともかわいい小皿やレンゲ、菓子の型など。取り出しやすく、しまいやすいので、日々使いたくなる。

では、最初にどんな器を買えばいいのか。細川さんの答えは明快だ。
「好きかどうかで選べばいいと思うんです。以前に、さんまを盛り付けられる長い皿を探していて、まさにそのための板皿を見つけて、物としてそれほど好きなわけではなかったけれど買ってみたんです。でも、ほとんど使うことがありませんでした。だから、用途では買わないほうがいいというのが、私流の器選びのポイントです」

見た目が美しくて好きだという抹茶碗を飯碗として使うのも、あまり抹茶を飲まない細川さんが、もっと登場回数を増やしたいと考えてのこと。「使うことが大事にすること」という思いがそこにはある。

きんぴらを盛ったり、昼に銘々で麺を食べたり。よく活躍する中鉢は、夫の作品。

「日本だけじゃないですか、こんなに器に繊細な感覚を持っているのは。海外では、プラスチックみたいな皿で食べているところや、紙の丼みたいなテイクアウトをそのまま使っているのを見かけます。そういうのは中身の食べものがおいしければ器は関係ないという感じ。でも、日本人は、器を手に触れて、手で持ち上げて食べる。そこに育まれる感受性は、素晴らしいことだと思っています。食育というと、食材や調理についてばかり語られるけれど、私はもっと食べるということ全体を通した、人の豊かさについて伝えていきたいと思うんです」

細川亜衣●料理家。イタリアで料理の研鑽を積み、結婚を機に熊本に移住。料理教室のほか、地元の食材を紹介する朝市や作家の個展を開催。著書に『野菜』(リトルモア)などが。

『クロワッサン』959号より

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