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林真理子さんとお金の話
「使ったお金はすべて糧になる」

自他ともに認める健啖家。おまけに買い物好きで、人生の買い物として家も建てた。そんな林さん流、お金とのつき合い方とは?

「お金は可能性を 広げてくれる」、 これが我が家の家訓でした

小学生の頃は普通に、親から毎月数百円のお小遣いをもらう生活でした。田舎だったからそんなにお金を使う場所もありません。しかもいまの私とは真逆で、欲しいものがなかったんです。発明好きだった父がおもちゃを作ってくれていたし。

林真理子さん●作家。1954年生まれ。『最終便に間に合えば』『京都まで』で 直木賞、『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞を受賞。最新刊『美女入門パート14 美を尽くして天命を待つ』(小社刊)が早くも話題

初めてのアルバイトは高校生のとき。ぶどう園で働いたり、ドライブインのウェイトレスをして稼いだお金で、友人と旅行に行きました。母からは「お金というのは可能性を作ってくれる。だからバカにしちゃいけないよ」とたびたび言われていました。たとえば成績がよくてもお金がないと医学部には行けない。お金が可能性を摘み取ってしまうことになるんです。だから使い方さえ間違えなければ、自分の可能性を広げてくれるお金は、あるに越したことはないと思っています

お金を使ったらその分だけ、 すべてが私の糧になる

私がいま一番お金を使っているのは「食」に対してですね。最近ご一緒するのは、私より年下の人ばかり。必然的に私が支払います。また、年上の方と一緒のときでも、自分が誘ったときは私が支払います。逆にごちそうになったときは、誰がお支払いくださったのかちゃんと聞き、直接お礼を言ったり、お礼状を書くようにしています。

食べ物に次いでは服飾費です。とくに着物にはいくら使ったことか……。100万円の服と聞くと驚きます。着物だったら100万円の反物や帯なんてザラ。最初に着物に目覚めたのは35歳のとき。着物を嗜むようになって、時代小説を書く際も、着物の描写や着物での細かい所作などが、実感としてわかるようになりました。勉強だけで書いた人と、実際に着ている人とでは、描写がまるで違ってくるはず。そう考えると、作家という仕事は有り難いことに、使ったお金が何らかの糧になるんです。そう言いながら、私は無駄遣いを繰り返しているんですが(笑)

病的なおせっかいが できるのも、 小金があるからこそ

私はおせっかい。それもやや病的なほど。結婚願望のある独身の女性がいれば、これまた結婚したいという男性とお見合いをセッティングし、食事会を企画するんです。結婚したカップルもいますよ。そういう場では、やはり仕切った私がお支払いするべきだと思うんです。

あとは「エンジンゼロワン01」をはじめとするボランティア活動やハロウィンで近所の子どもたちに何百個もお菓子を配る。これも融通が利くお金がないとできないことです。きっと神様はこのおせっかいな性格を持続させるために、小金を稼がせてくれているのかな?と最近考えるんです。いつまでも他人におせっかいを焼けるよう、これからも一生懸命働こうと思っています。

これでも昔は物欲、なかったんです

大学時代は仕送り+バイトの日々。服にも興味がなく、毎日同じ服で過ごしていました。卒業後に就職できず、仕送りがなくなり初めて貧乏を実感。

でもそんな生活の中で15万円を貯め、そのお金でコピーライター養成講座へ行き、作家への道が開けました。あの頃、物欲がなかったおかげで今日の私があるのかもしれません。

いまは娘に、「お金を使いすぎ」と諭されます

娘は私を反面教師としているのか、それとも単に変わっているのか、まったくお金を使わない高校生です。服にもまったく興味を注がず、むしろ私の買ったものを見て「ママはお金を使いすぎ! 何足も持っているのに、何でまた靴を買うの?」と至極真っ当なことを言います。

そんなひとり娘に、できる限りの財産を残したほうがいいのか? 私は子どもにはできる範囲の中で、本人が望む最高の教育を受けさせることができれば、あとは財産なんて残さなくていいのでは、という考え。

むしろ老後は家を売り、そのお金で夫と施設に入り、子どもに世話をかけないようにしたいんです。子どもは親を頼らず、親は子どもを頼らず。そんなお互いが自立した老後を望んでいます。

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