自分が高座にあがるときに、次の出番の人が前の仕事が延びたなどの理由でまだ楽屋入りしていないなんて場合も。そんなときは「つなぐ」といって、おあとの人が楽屋に入り、高座にあがる支度が整うまでしゃべり続けなくてはいけません。私は過去、15分予定の高座で40分しゃべったことがあります。ええ、ドキドキですとも、それはもう。
一人で演じる落語家が、お客さまに知られないように楽屋からのサインを受けるときに使うのが「羽織」です。ふだんはおしゃべりしながら脱いだら自分のうしろに置いておきますが、つなぎの場合は脱いだ羽織を高座の袖に放り投げます。
楽屋であとの出演者の支度ができたら、前座が目立たないタイミングで袖の羽織を引いて取り込む。横目でそれを見た高座の噺家が「もう終わってもいいんだな。では良い加減のところでオチをつけて高座を降りよう」と考える……。
皆さんに素敵な落語日和をすごしていただくために、気づかれないところでハラハラするような瞬間があったりするんです。