いわゆるヴィンテージマンションと呼ばれる物件に、30年以上暮らしているのが建築家の福川さん夫妻。建築のプロであり、さらに数百件の物件を見比べた厳しい目に適ったのは、都心とは思えない緑豊かな敷地や、ホテルライクの管理体制など……。
「中でも、メンテナンスの状態をきちんと見ました。引っ越してきた当初は築10年ほど経ったタイミングでしたが、とてもよく管理されていて、住民が大事に暮らしている様子が伝わってきました。マンションとは共同体の村のようなもの。長く大切に使われているマンションには、住民の愛情も表れてくるんです」(福川公大さん)
引っ越し時に浴室以外をフルリフォームし、さらに20年前、息子の独立を機に新たなリフォームを加えた。
「マンションは基本的な性能などが最初に決まっているので、リフォームできることにもある程度制約があります。でも、設計した当初の建築家の提案は、暮らす人のベストであるとは限りません。自分の生活スタイルが変われば、心地よい空間への条件も変わります。限られた条件の中で暮らしやすい空間を作るために、リフォームは必要です」
そこでプロだからわかる、リフォームを成功に導くポイントを聞いた。
「欲張って何でもやろうとしないことです(笑)。マンションはとにかく制約が多いから、リフォームで何ができるかをまず具体的に知ること。そして、自分が一番大切にしたい場所をメインに考え、そこから生活を想定してみて、何が必要か、そうでないかをジャッジしていく……。リフォームの作業は、今の自分の生活を基準にして、暮らしを整理整頓していくことかもしれません」