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口あたり優しく手になじむ。漆の器の使い方をスタイリスト・高橋みどりさんに聞く。【前編】

  • 撮影・合田昌弘 スタイリング・高橋みどり

〔入れ子組椀〕いずれはこの組椀だけで 過ごせるようになるのが理想。

蓋を返して海苔をのせ、ご飯、味噌汁、香の物、梅干し。いつもの朝ごはんにもしっくり合う。

入れ子状になった組椀は、4つの椀と蓋から成る。飯椀、汁椀、蓋も含めて3つの皿。1人分の食卓ならこの組椀ひとつでまかなえる。

入院していた母のため、病院の味気ない食事も、器を変えるだけで気分が明るくなるのではないかという思いから、当時高橋さんが手に入れたものだ。
「母はもちろん、看病する側もほっとしたことを覚えています」と振り返る。

「いずれは、この器だけで過ごす生活にも憧れている」という高橋さん。禅宗の僧が持つ応量器にも似た、この組椀にふさわしい使われ方にちがいない。

入れ子組椀・仁城義勝 作
病院で使うには、軽くて取り扱いが楽なことも大切だったという。一番大きな椀の口径12.5cm、高さ7cm 一組2万3500円 問い合わせ:日日

〔切溜〕キッチンツールとしての漆の使い方を見直す。

今晩は豚しゃぶ。豆苗に水菜、レタスは湯を通してもシャキシャキしておいしい。つけだれは、オリーブオイルやごま油においしい塩、そしてすだちを搾って。

「重なったフォルムが美しかったから、購入を決めたのですが、使ってみればなんとも重宝するものでした」と、高橋さん。もともとは台所で使う生活道具で、食材を入れたり、保存箱として使うもの。
「バット代わりに使ったり、鍋物のときに肉や野菜などの具材を入れておいたり。並べただけでも美しいので、盛り鉢としても使います」

さらには、キャンプへ行くときに車に積んで行くこともあるのだという。
「かさばらなくて、軽い。道具としても器としても使える。漆は働きものです」

切溜(拭漆仕上)・赤木明登 作
木目の存在が感じられる仕上げ、ぴしっと重なった姿も美しい。一辺24cm、高さ7.5cm 参考商品

〔丸重〕「今日はなんの日?」思い出が詰まった丸いお重。

1段目には自家製の甘酢(青梅をはちみつと酢に漬ける)で作ったまぜずし、2段目にはつくね、3段目には3種のナムルを詰めて。

「幼いときからいつも我が家では、丸重が活躍していました。ひな祭りにはまぜずし、お彼岸にはおはぎ、運動会にはのり巻きにおいなりさん」

食卓に丸重を見つけたら、「今日はなんの日?」。高橋さんのうれしい思い出とつながっている。この丸重は、取材の折に見つけて、後々購入したもの。お正月くらいしか出番がなく、畏まった印象のお重だが、形が丸くなると、親しみがわいてくるのも不思議だ。
「丸重は、すごく平和な感じがしますよね。気軽に使え、暮らしをほんの少し楽しくしてくれる器だと思います」

丸重・大崎漆器店
輪島の塗師屋・大崎漆器店を取材した際オーダーし、購入。直径18.5cm、高さ(重ねて)16.5cm 16万円 問い合わせ:大崎漆器店 TEL 0768・22・0128

>> 【後編】はこちら

※紹介する器は高橋さんの私物です。在庫とはサイズが異なる場合があります。

高橋みどり●スタイリスト。スタイリングを通じておいしさを読者に伝えてくれる高橋さん。器関係の著書は、『毎日つかう漆のうつわ』(共著/新潮社)、『わたしの器 あなたの器』(KADOKAWA)。近刊『ありがとう! 料理上手のともだちレシピ』(マガジンハウス)も好評発売中。

『クロワッサン』959号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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