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柚木麻子さん「私の新刊『BUTTER』も経済小説だと知ってびっくり」

  • 撮影・千葉 諭、岩本慶三(柚木さん) 文・一澤ひらり

創業家一族ではなく、経理畑から叩き上げで社長に就任した反骨精神旺盛な武田剛平を主軸に物語は進んでいく。海外市場への進出と技術革新に資源を投入するなど、武田はトヨトミを世界一の自動車メーカーに成長させる。

「経営者として武田は魅力的ですよね。正義漢で経理にいるときは不正を正していくし、度胸もあって左遷されてマニラにいたときにはヤクザと渡り合うし、人脈を築いてフィリピン大統領にまで会うようになる。その行動力もさることながら、日本が排他的なナショナリズムを脱却して移民国家にならないと国力が衰え、やがて沈没すると見通す先見の明もある。武田は異端児のように見えますけど、価値観がまっとうなんですよね。こういう人が大企業や銀行に入ると、悪いところが浮かび上がってくるんだと思いました」

武田は創業以来続く豊臣家の支配に終止符を打とうとするが、創業ファミリーは創業者の孫・豊臣統一をトップに就かせようと画策する。

「武田とジュニアの勢力争いが大きな見どころですけど、日本の同族企業って、同族が君臨している王国ですよね。社長の武田は豊臣一族ではないから、あくまでも使用人の立場になる。面白かったのは、武田が技術スタッフに『3年後の量産化を1年でやれ』と命じると、『無理です、3年でも難しい』と抵抗される。しかし『2年でやってくれ』という会長の豊臣新太郎のひと言で決着がつくところですね。豊臣家の言葉は絶対で、社員は逆らえない。が、実は、武田は最初から2年で手を打つつもりで駆け引きをしていたというのは、なるほど、こういうことはあるだろうなと思いました」

「エンタメとして面白いし、大企業のスケールの大きさは驚きです」
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