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井上荒野さんの原点となった、母から贈られた料理本。

  • 撮影・三東サイ 文・後藤真子

「最初に作って自分でもおいしいと思ったのは、『おそうざい十二カ月』に出ている〝なすのいなかふう〟です。醤油で煮るだけなのに、本当にそのとおりに作るとおいしいし、説明文もぐっとくるんです」

ページを開いてみると、『舌の上でとろけるようにやわらかく、なすの好きな人は、焼くのより、いためるのより、これがおいしいといいます』とある。

「ぐっとくるでしょう(笑)。実は私、子どもの頃は好き嫌いが多くて、魚や野菜はあまり食べられなかったんです。お酒を飲むようになるにつれ、いろいろ食べられるようになりました。ちょうどひとり暮らしを始めた頃で、あれも作ってみようか、これも食べてみようかと広がっていった感じです」

まさに井上さんの料理入門期を共に歩んだ本である。その中からこの日作ってくれたのは、しいたけ丼、つまみ菜(かいわれ菜で代用)のごま汁、木の葉カツの3品。加えて、好んでよく作るという浅漬けも用意してくれた。

エプロンをして台所に立った井上さんは、手早くグリルでしいたけを焼き、それを刻んで味をつけ、ごまを炒り、衣を作って豚肉につけ中華鍋で揚げていく。おしゃべりしながらも手さばきは鮮やかで、何よりとても楽しそうだ。見ているこちらもわくわくしてくる。そして、出来上がったしいたけ丼をひと口含み、「うん、これおいしいね!」と、笑顔が弾けた。

「『あ、これ食べたい』を探して新しいレシピ本をめくります」と井上さん。
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