「家族を面白く書いてもいいんだっていうのもさくらさんのエッセイが教えてくれたことです。『もものかんづめ』の中に〈メルヘン翁〉っていう、さくらさんのおじいさんが亡くなったときの話があるんですけど、どうしようもなく笑ってしまう。禁忌に思えることすらも面白く読めるっていう、タブー無しの感じがすごく印象的だったんですよね。しかも『ちびまる子ちゃん』の優しい友蔵じいちゃんが実は……、みたいなこともわかったりして」
ことのほか魅かれるのは、ちょっとしたことだけでもメチャメチャ楽しもうという精神が、いろんなところから感じられること。
「その精神にはいまでもすごく憧れていますね。さくらさんのエッセイによって、カッコいい大人とはバカバカしいくらい無駄なものに時間とお金と労力を注ぎまくるものっていうイメージがインプットされました。昔から、大人になったら思いっきり真剣にくだらないことをしたいなって思っていました」それをエッセイにして書くというのが小説家を夢見る朝井少年の大きな野望になっていったのである。