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貨物船で暮らす寡黙でやさしい猫、カンパチ船長。

まさとさんに抱っこされるカンパチ船長。ピンクの首輪は取引先 の女性社員からプレゼントされたもの。

内航船の航海は数人の船員で行う。乗船中だんだん話題がなくなり、退屈することも多い。「男ばかりで同じ釜の飯を食い、同じ風呂に入って3カ月くらい航海を続けるのが普通です。家族より長い時間をクルーと一緒に過ごす、その中にカンパチ船長が加わることで、なごやかな雰囲気になりますね」

そのとき、機関長が大量のキャットフードを街で買って船に戻ってきた。カンパチ船長のごはんである。「機関長はいつもムスッとして、ほとんど笑わない人だったんですよ。全然しゃべらなかったのに、カンパチ船長が来てからデレデレですね。キャットフードは飼い主の私が買わなきゃいけないと思うんですけど、近頃は機関長が買ってくるからどっちが飼い主かわからない(笑)。トイレの砂の交換も、カンパチ船長を風呂に入れるのも、私がやるって言ってるのに機関長がやってくれちゃうんです」

操舵室と居住区を行き来する階段こそが、船長の気分転換と体力づくりの場である。

よくよく話を聞いてみるとデレデレなのは機関長だけではない。「ベテランの航海士が〝わしは猫嫌いなんじゃー! 飼うんだったら勝手にせい!〟と最初つむじを曲げていたのに、1週間もしないうちに〝カンパチ、カンパチ、ほらおいで〟って猫なで声に変わりましたよ。カンパチ船長は、特にかわいい子ですから」

まさとさん自身、完全にデレデレなのである。軽い気持ちでツイッターに愛猫の写真をアップしたら、たちまち人気に火がついた。カンパチ船長の本も出版され、ツイッターのフォロワーは8万人を超えた。「内航船といっても知らない人が少なくなかったのに、カンパチ船長をきっかけに内航船の海運に興味を持ってくれる人や、船員を志す人が増えてきました。船の仕事だけじゃなくてPRの仕事までしてくれるんですから、本当に働き者の猫ですよ」

昔は〝オスの三毛猫を乗せると船が沈まない〟というジンクスがあった。初期の南極観測船にはオスの三毛猫が乗船していたという。「最近あまり猫を船に乗せる話は聞きませんが、カンパチ船長は海の猫の復権にも一役買いそうです(笑)」

『クロワッサン』954号より

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