ジロリくんはホールに出演しているジャズバンド、「にゅうおいらんず」のメンバー、ミーカチントさんの紹介だった。彼女が松戸で経営する喫茶店に、突然訪ねてきたのだそう。「こんにちはあー」というノリで店に入ってきた。
「みんなが唖然とする目の前で、ゴロンとソファで仰向けになったそうです。その時に、周囲をじろりと見たことから、名前はジロリになりました」
もともとは飼い猫だったのだろう。人懐っこく、去勢もされていた。採用面接はまさえさんがミーカチントさん宅で行った。
「会って5分で私の膝にぴょこんと乗ったので、即採用!となりました。私がジロリに許されたような感じです」
しかし当初、まさえさんには一抹の不安が。ジロリくんを抱えた時。脚がだらーんと脱力したのだ。ネズミ捕りが苦手な猫の特徴と言われている姿だ。「大丈夫かな……」
しかし、それは杞憂だった。〝勤務〟が始まると、昼間は切符売り場で受付。演目がすべて終わり職員が帰宅しても、ジロリくんはホールに寝泊まりしてネズミを探しまわった。そしてジロリくんが退去の忠告をしても無視するネズミに対しては、捕獲という強硬手段も行使した。