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浅草の新名物。演芸ホールの窓口に姿を見せる看板猫、ジロリくん

  • 撮影・青木和義 文・神舘和典
ジロリくんは澄んだビー玉のような瞳。入社以来10カ月で4匹のネズミを捕獲。前任のクロくんは現在22歳。まさえさん宅で余生を満喫。

ジロリくんはホールに出演しているジャズバンド、「にゅうおいらんず」のメンバー、ミーカチントさんの紹介だった。彼女が松戸で経営する喫茶店に、突然訪ねてきたのだそう。「こんにちはあー」というノリで店に入ってきた。

「みんなが唖然とする目の前で、ゴロンとソファで仰向けになったそうです。その時に、周囲をじろりと見たことから、名前はジロリになりました」

もともとは飼い猫だったのだろう。人懐っこく、去勢もされていた。採用面接はまさえさんがミーカチントさん宅で行った。

「会って5分で私の膝にぴょこんと乗ったので、即採用!となりました。私がジロリに許されたような感じです」

しかし当初、まさえさんには一抹の不安が。ジロリくんを抱えた時。脚がだらーんと脱力したのだ。ネズミ捕りが苦手な猫の特徴と言われている姿だ。「大丈夫かな……」

しかし、それは杞憂だった。〝勤務〟が始まると、昼間は切符売り場で受付。演目がすべて終わり職員が帰宅しても、ジロリくんはホールに寝泊まりしてネズミを探しまわった。そしてジロリくんが退去の忠告をしても無視するネズミに対しては、捕獲という強硬手段も行使した。

「ジロリが来てほどなく、朝、切符売り場の部屋に入ると、カウンターの上に成仏したネズミが置かれていました。私にとってうれしいプレゼントではありませんが、安心はしました」

小刻みに睡眠をとるものの、ジロリくんは24時間勤務の働き者。その後も確実に成果を上げ、ネズミは逃げ出して明らかに減っていった。「ジロリの本業はネズミ退治ですが、今は大切な広報スタッフでもあります。落語や漫才の観賞はもちろん第一目的ですが、ジロリに会うことを楽しみに来てくれるお客さんも増えています」

しかも、ジロリくんは自分の食い扶持を自分で稼いでいる。

「彼は差し入れのペットフードで暮らしているんですよ。林家ぺー先生とは大の仲良しで、ぺー先生からはいつもおいしいご飯をいただいています」

いまやジロリくんはホールになくてはならないマルチな存在なのである。

『クロワッサン』954号より

●浅草演芸ホール/東京都台東区浅草1・43・12(六区ブロードウェイ商店街中央) ☎︎03・3841・6545 年中無休 昼の部11時40分〜16時30分 夜の部 16時40分〜21時 料金・大人2、800円(特別興行の場合は時間・料金に変更あり)

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