言うなれば「愛でる収納」。気に入った現代アートの大作を飾るため、自宅の部屋をリフォームしてしまったのが、アートコレクターの石鍋博子さんだ。
「桑久保徹さんの〈詩人の庭2〉を飾りたくて、キッチンを潰して展示部屋にしたんです。桑久保さんの最初の個展で購入した絵ですが、いまだに新しい発見があるし、昼間見たり夜中に見たり、対話したりして。それがアートと暮らす楽しみですよね」
石鍋さんが代表を務める「ワンピース倶楽部」は、現代アートのマーケット拡大のため、1年に1作品以上を購入して楽しむ人たちの集まり。設立のきっかけになったのは骨董コレクターだった夫に病気で先立たれたことだった。失意の日々の中で現代アートへの興味が深まり、10年前に立ち上げた。
「私は作家に会わずに作品を買うことがないんです。作家の考え方とか生き方に共感できずに作品を買ったら、単なるインテリア。現代アートとインテリアの大きな違いがあるとしたら、その背後にちゃんと作家が見えるかどうかだと思うんですね。プロダクツだったら平気で片づけられるけれど、アートはそれができません。だから部屋だけでなく、廊下やトイレにもたくさん飾ってますけど、自分の中では一つとして疎かにしているものはないんです。朝起きたら『おはよう』って、家族に気軽に声をかける感じですよね」